赤川次郎さんのおすすめミステリを10作品に厳選しようとしていたら、はじめは20作品を超えてしまった。
それほど面白い作品が多いのである。そこから10作品までに絞り込むのは至難の技であった。この記事を書くより時間がかかったし、疲れた。
しかしそのおかげでより良い作品を選び出すことができたので、私にとってもありがたい時間となった。
・赤川次郎さんのおすすめ作品を知りたい。
・単純に面白いミステリを読みたい。
そんな方たちの参考にしていただければとても嬉しい。
目次
1.『魔女たちのたそがれ』
傑作ホラーサスペンス。
山の中の小さな町で教師をしている幼なじみから「助けて…殺される」という電話がかかってきた。電話を受けた津田はその町へと乗り込むがーー。
「閉鎖的な村での連続殺人」という個人的にもツボな設定。本当にゾクゾクする。だがもちろん怖いだけではなく、休む暇を与えてくれないほどの面白さを誇るのだ。
読みやすさも相まって、間違いなく一気読みしてしまうだろう。そして最後に本気でビビる。初見では「え!!」と声に出してしまったくらいだ。
賛否あるようだが、私はこのオチは最高に好き。もう一度いうが、この作品は「ホラーサスペンス」の傑作なのだ。
間違いなく続きが気になるはずなので、続編『魔女たちの長い眠り』と合わせて一気に読んでしまおう。
2.『マリオネットの罠』
言わずと知れた名作であり「赤川次郎最高傑作」と呼ばれることも多い。
ある姉妹が住む館に、家庭教師としてやってきた修一は、地下室に幽閉されていた少女を発見。かわいそうに思った修一は彼女を逃してしまう。
すると街では不可解な連続殺人が巻き起こる。現場で目撃されるコートを着た女性とは一体誰なのか。
全4つの章から成り立っており、それぞれホラー、サスペンス、冒険活劇、などの違った面白さが楽しめるのも特徴。それが最後にきっちりまとまってくるのだから、面白くないわけないだろう。
読みやすさも抜群。終始サスペンスに溢れる展開であり、物語への引き込まれ具合は異常なほどだ。時間を忘れて読みふけってしまう。
もちろんミステリとしての面白さも一級品なのだから、最高傑作と呼ばれるのも納得なのである。

3.『黒い森の記憶』
赤川次郎さんの最高傑作は?と聞かれたら、この『黒い森の記憶』か『魔女たちのたそがれ』か『マリオネットの罠』で3日ほど悩んだあげく、答えられないだろう。
森のはずれの山荘で、元医者の老人が一人で暮らしている。
一方、山荘の外では少女暴行殺人が巻き起こっていた。そして老人の元に届く奇妙な贈りもの。これらの奇妙な出来事をつなぐものとは。
なぜ老人はこんな場所で一人ぐらしを?
少女暴行殺人の犯人は?
品物を送り届けてくる人物は?そしてその意味は?
ホラーミステリと言っても幽霊とかそういう類のものではない。ホラー風味の「ミステリ」である。
漂う怪しげな雰囲気。謎に続く謎。はりつめる緊張感が高まりきった終盤の二転三転する展開も見事なり。

4.『招かれた女』
このくらい初期の頃の作品が大好きだ。
発見された女子中学生の死体。刑事たちは容疑者を確保しようとするも、刑事の一人が射殺され、その容疑者も事故で死んでしまうという最悪な結果となった。
しかしこれで事件は解決。かと思いきや、殺人は終わらない。
一言でいうなら「ブラック赤川」である。なんなのだこの後味は!
「やられた」というより「そうくるか」と思わせてくれる、ある意味予想外の結末。これぞ、私の好きな赤川次郎なのだ。
赤川次郎=ユーモアミステリーの人、というイメージがある方にこそ読んでいただきたい。
5.『ひまつぶしの殺人』
赤川次郎さんらしいユーモアが詰まりに詰まったミステリ。
普通の家族のように見える5人だが、それぞれが泥棒、殺し屋、詐欺師、警官、弁護士という職業についている。しかも家族の秘密を知るのは弁護士の次男だけ。
この奇想天外な設定だけでも楽しいが、その後の展開だって当然面白い。石油王のダイヤを巡り、5人がドタバタ事件に巻き込まれていく様はコメディ映画を見ているよう。
テンポよくコミカルに物語は進み「ああ楽しい小説だ」と思いながら終盤に近づくと、今までに忍ばされてきた伏線の多さと回収に脱帽することとなる。ただの面白小説ではなくミステリとしても逸材なのだ。
しかも今作は「早川一家シリーズ」の一作目。この次は、②『やり過ごした殺人』、③『とりあえずの殺人』へと続く。
一作目の『ひまつぶしの殺人』を読んだら間違いなく早川一家のファンになっているはず。ぜひ続けて読でしまおう。
6.『死者の学園祭』
学校にある立ち入り禁止の部屋に入った女子生徒3人が次々に謎の死を遂げる、という引き込まれる展開。
そんな彼女たちの死に疑問を抱いた生徒・結城真知子が事件解決に挑む!という作品である。
「古き良き本格学園ミステリ」という言葉がぴったりな今作は、ミステリ小説を読みなれていない方への入門書としても最適な印象を受ける。
まず読みやすさが異常だ。描写に時代を感じる(そこもまた良い)ものの、サラサラと流れるように読める。文庫で約260ページほどなので、2時間もあれば読了することだ出来るだろう。
そして展開のシンプルさ。ごちゃごちゃしないわかりやすいストーリーは読んでいて安心する。シンプルイズベスト!
死者の学園祭 赤川次郎ベストセレクション(12) (角川文庫)
7.『幽霊列車』
デビュー作『幽霊列車』を含めた作品集。
これ一冊で赤川次郎さん「らしさ」が堪能できる贅沢な作品となっている。ブラックな展開もなく、気軽に楽しめるのも嬉しいところ(でも個人的にはブラック赤川さんの方が好き)。
短編ながら伏線の張り方も絶妙で、ひねられたトリックには「おお」と唸ってしまう。
始発電車に乗ったはずの客8人が、次の駅に到着するまでに全員消えてしまったーー。
そんな謎に迫る表題作も見事だが、個人的には「裏切られた誘拐」がベスト。ぜひ読んでみてほしい。
8.『三毛猫ホームズの推理』
三毛猫ホームズシリーズの1作目。数ある同シリーズ作品の中でもベスト3に入る名作である。
三毛猫ホームズシリーズというと「ライトなミステリー」というイメージがあるかもしれないが、今作はガチの本格推理小説。ほどよくユーモアを挟みつつも、なかなかシリアスな展開が楽しめる。
注目すべきは、ズバリ「密室トリック」。密室トリックに終わりはない!と思わせてくれた「新しい密室トリック」をぜひ目にしていただきたい。
三毛猫ホームズのオススメはたくさんあるが、この他には『三毛猫ホームズの追跡』や『三毛猫ホームズの騎士道』、『三毛猫ホームズの狂死曲』などがマイベスト。

9.『黒い壁』
社会派ミステリであり、サスペンスホラーであり、ちょっとSF。
友人からドイツ土産に「ベルリンの壁のかけら」をもらった利根。しかしその時から利根の周りで不可解なことが起き始める。死体の消滅、友人の失踪ーー。
全てはこの壁のかけらが原因なのか?いったい何に関係しているんだ?
序盤から張り詰める緊張感、続きが気になって仕方がない展開の連続。まるでスリル満点のジェットコースターを乗っているような感覚に陥る。
重々しい雰囲気なのだが、一気読みは逃れられないだろう。
また、サスペンス要素だけでなく日本とドイツの暗い繋がりにも注目である。
10.『三姉妹探偵団』
「読みやすくて面白い」。これに尽きる。
タイトルからお察しの通り、個性的な三姉妹を探偵役とした大人気シリーズである。これを読んで赤川次郎さんを好きになった、という方も多いはず。
ユーモアミステリの決定版との言葉通り、ミステリながら軽快なステップで楽しく読み進めることができる。三人の性格の違いも面白ポイント。
今もなお続編が書かれており、現在までに24巻も出ていることからその人気っぷりがうかがえる。
ただ、ネットで購入する際は注意が必要だ。
「お、表紙の女の子かわいいじゃん!」と思って購入すると、旧版の表紙のものが届く時がある。旧版の表紙の姉妹たちは、残念ながら可愛いとは言い難い(これはこれで味はあるが……)。
(ネットで買うとこの旧版が届くことが多い。整形というより別人である。)
わたしはネットでこの失敗を二回繰り返し、最終的にリアル書店で購入した。ネット購入の場合、表紙が新版だとしても旧版が届く場合があるので注意しよう。
可愛いイラストの方が良い場合は、表紙を確認できる書店などでの購入がおすすめである。
おわりに
というわけで、私がおすすめしたい赤川次郎さんの作品はこんな感じ。
時間をかけただけあって、我ながらナイスチョイスである。
少々偏りはあるが、非常に面白い作品ばかりなのでぜひ参考にしていただきたい。
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