鮎川哲也さんのおすすめ作品を選んでいたら「ほぼ全部」になってしまった。
それでは全く厳選になっていないので、急遽、「鮎川作品を読んだことがない方は、まずはコレから」という作品を選ばせていただいた。
いずれも鮎川哲也さんの代表作であり、鮎川さんの凄さが存分にわかる作品となっている。これを読めば、きっと他の作品も読みたくなっちゃうことだろう。
鮎川哲也さんのおすすめという以前に、ミステリー小説がお好きなら読んでおいて間違いない作品ばかりだ。
・鮎川哲也さんのおすすめを知りたい!
・純粋に面白いミステリー小説が読みたい!
という方の参考にしていただければとても嬉しい。
1.『黒いトランク』
①汐留駅で発見されたトランクに腐乱死体が入っていた、②その送り主は別の場所で死んでいた、③あっけなく事件解決かと思いきやとんでもない事態に。
という、トランクの中に入っていた死体を巡る「アリバイもの」の傑作である。これ以上のあらすじのネタバレは避けたい。
F・W・クロフツの『樽』を元にして書かれており、その『樽』をさらに複雑にして一晩寝かせ熟成させたようなすごい作品なのだ(横溝正史の「蝶々殺人事件」が元という話もある)。
複雑すぎるトリックに脱帽
一つ問題があるとすれば、トリックの作り込みが複雑すぎるため、しっかり読んでいないと何が何だかわからなくなってしまうこと。解決編はきっと何度も読み返すことになる。
しかーし!
その巧妙なトリックがすべてわかった時のあの興奮!(私はメモを取りながら読んでやっとわかった)
凄いとしか言いようがないというか、こんなトリックの連続は贅沢すぎるというか。改めて読み直すと、あんな所にもこんな所にも伏線があってさらにびっくり。
「鉄道」や「時刻表」などを主軸としたアリバイものは地味だなあ、読む気しないなあ、という方にこそ読んでいただきたい。
なぜこの作品が今なお〈傑作〉と呼ばれ続けるか、その理由がお分かりいただけるだろう。
2.『リラ荘殺人事件』
『黒いトランク』と並ぶ代表作。鮎川哲也さんの作品で一番好きなのは?と聞かれたら私はコレを選ぶ(館モノが好きだから)。
「リラ荘」に訪れた芸大生七名に降りかかる殺人劇を描く今作は、「これぞ本格推理小説!」といった感じの王道ミステリである。
テンポよくバンバン人が殺されていくのだが、その一つ一つのトリックがもう贅沢なぐらいにすごい。こんな連発しちゃっていいの?ってなる。
いたるところに張り巡らされた仕掛け、緻密な伏線とその回収も見事の一言。解決編でのすべての点と線が繋がっていく感じは本当に気持ちが良い。「なるほど!」と何回叫んだことか。
本格要素、盛りだくさん
山荘を舞台としているがクローズドサークルものではなく、警察も普通に出入りしているのもポイント。よくある館モノとはちょっと違うのだ。
フーダニット(犯人は誰なのか?)はもちろん、死体の横にトランプカードが置かれるなど、魅力的な《ホワイダニット(なぜそんなことをしかのか?)》が豊富に盛り込まれているのも嬉しい。
さらに最後には、推理小説らしく〈名探偵〉が登場し、華麗に事件を解決していく。どこまでも「本格」を楽しめる作品なのだ。
3.『五つの時計―鮎川哲也短編傑作集』
驚くなかれ。
なんと収められている十編すべてが「傑作」という〈奇跡の短編集〉なのだ。
アリバイものの大傑作『五つの時計』をはじめ、
本格ミステリの教科書とも言えるフーダニット&パズラー『薔薇荘殺人事件』、
時刻表トリックにして最後の逆転が鮮やかすぎる『早春に死す』、
密室の王者・カーの『白い僧院の殺人』へと挑戦した『白い密室』、
などなど、短編ながら密度が高くヒネリの効いたものばかり。
とにかく盲点を突くのがお上手であり、真相を明かされた後に「あああ!」と声を上げてしまうのだ。短編で味わうには贅沢すぎるのではないか、と心配になるほどの衝撃だ。
必読級の短編集
断言しよう。ミステリがお好きであれば、読まないと確実に損である。
しかし「短編集だから」という理由で、気軽にサクッと!なんてもったいない事をしてはいけない。じっくりと、一編一編を舐め回すように読むのだ。
さらにこれだけでなく、第二傑作短編集『下り“はつかり”―鮎川哲也短編傑作選』にも見事な作品ばかりが収められている。
長編作品を手に取りづらかったら、まずはこの短編集だけでも読んでみていただきたい。
絶対ハマっちゃうのだ。
おわりに
今回ご紹介した3作品を読んでいただけたなら、ほぼ100%の確率で「鮎川哲也さん凄すぎい(^o^)」となっているだろう。
しかし、こんなのまだ序の口である!
この後にも
・『黒い白鳥』
・『憎悪の化石』
・『人それを情死と呼ぶ』
などの傑作たちがあなたを待ち構えている。もう全部読んでしまって構わない。どれも名作なんだもの!
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