『密室トリック』が凄い、のではなく、『密室』が凄い、という所がポイント。
『密室』はもはや推理小説に欠かせない要素であり、密室殺人を扱った面白い作品を挙げていったら、正直キリがない。
そこで今回は、数多くある「密室を扱ったミステリー小説」の中でも〈これだけは読んでおきたい〉というおすすめ名作だけを厳選した。
どの作品にも非常に優れた『密室』ばかりが登場するので、ぜひ「この密室すごーい!」「こんな密室はじめてー!」と、楽しんでいただければ幸いである。
※これからも「この密室が凄い!」と思った作品があったら(思い出したら)随時追加していきます( ˘ω˘ )
目次
- 1.『ポアロのクリスマス』
- 2.『ブラウン神父の不信』
- 3.『白い僧院の殺人』
- 4.『三つの棺』
- 5.『ビッグ・ボウの殺人』
- 6.『黄色い部屋の秘密』
- 7.『三人の名探偵のための事件』
- 8.『帽子から飛び出した死』
- 9.『自宅にて急逝』
- 10.『衣裳戸棚の女』
- 11.『モルグ街の殺人』
- 12.『下り“はつかり”―鮎川哲也短編傑作選』
- 13.『姑獲鳥の夏』
- 14.『哲学者の密室』
- 15.『雪密室』
- 16.『斜め屋敷の犯罪』
- 17.『七つの棺―密室殺人が多すぎる』
- 17.『翼ある闇』
- 19.『三毛猫ホームズの推理』
- 20.『吸血の家』
- 21.『ラン迷宮 二階堂蘭子探偵集』
- 22.『密室の如き籠るもの』
- 23.『念力密室!―神麻嗣子の超能力事件簿』
- 24.『本陣殺人事件』
- 25.『刺青殺人事件』
- 26.『世界は密室でできている。』
- 27.『すべてがFになる』
- 28.『女王の百年密室』
- 29.『虚無への供物』
- 30.『亜愛一郎の狼狽』
1.『ポアロのクリスマス』
数多くあるクリスティの作品の中で、密室殺人を扱った本格モノといえばコレ。他の作品に比べなぜか知名度が低いけど、文句なしの傑作である。
しかも「密室モノ」としてだけでなく、「意外な犯人」の傑作でもあるのだからオススメしないわけにはいかない。
まさかの犯人が明かされたとき、一旦ページを閉じ、目をつぶり、「ちょっと待ってくれ」と、しばらくその事実を受け入れられなかったくらいだ。
これには、私と同じように「絶句」してしまう派と、思わず「ウソでしょ!」と声に出してしまう派の2パターンある。
クリスティで「意外な犯人」といえば『アクロイド殺し』が有名であるが、『ポアロのクリスマス』も同じくらい評価されるべきだろう。
ストーリーもプロットも伏線の忍ばせ方も、クリスティらしさが溢れていており、ファンとしても非常に嬉しい一作である。

2.『ブラウン神父の不信』
G・K・チェスタトンによる〈ブラウン神父シリーズ〉の第3集。
珠玉の8編が収録されている短編集であるが、中でも『犬のお告げ』『ムーン・クレサントの奇跡』『翼ある剣』が密室モノの傑作である。
特に『翼ある剣』は「雪の山荘」の先駆けとなった作品であり、カーの『白い僧院の殺人』もこれに影響を受けて書かれている。
もちろん、そのほかの短篇も質の高いものばかり。密室好きに限らず、ミステリに興味があるならまず読んで間違いない短編集なのだ。
3.『白い僧院の殺人』
密室の王者ジョン・ディクスン・カー(カーター・ディクスン名義)の最高傑作候補。
「足跡のない殺人」および「雪の密室」を扱った歴史的作品である。密室モノを読む上ではまず外せない。
カーならではの怪奇的趣味もほとんどなく、非常に王道な本格推理小説だ。
非常にシンプルなトリックでありながら、今なお色褪せることのない完成度を誇る。
4.『三つの棺』
続いてもジョン・ディクスン・カー。
カーの代表作であり、密室好きのバイブル的存在である。
本作で語られる「密室講義」はあまりにも有名であり、これから密室作品を読んでいくうえでも絶対に読んでおきたいところ。
カーの密室モノは本当に面白いものばかりなので、紹介していたらキリがない。ぜひ、以下の記事を参考にカーの世界を堪能してほしい。

5.『ビッグ・ボウの殺人』
〈密室ミステリの父〉と呼ばれたザングウィルによる、密室モノの元祖。いわば、古典傑作。
「この作品があったからこそ、現代の密室トリックがある」と言っても良いくらいで、今作で扱われている密室トリックは現在も多くの作品に使い倒されている。
なので、すでに多くの密室モノを読んでいる方には衝撃が少ないかもしれない。その点だけが悔やまれるが、ストーリーそのものが面白いので、今読んでも問題なく楽しめる作品である。
6.『黄色い部屋の秘密』
ガストン・ルルーによる密室モノの最高傑作候補。
世界で一番有名な密室、と言っても良い。
「黄色い部屋」の中から令嬢の悲鳴が聞こえたが、ドアには鍵がかかっていて中に入ることができない。数人でドアを破壊し部屋に入ると、そこには血を流して倒れている令嬢がいるだけだった。
メインとなる密室トリックには当時から賛否あったようだが、私は大絶賛派。否定的な意見があることが信じられないくらいだった。しかし今読むと、まあ確かに、とも思う。
今作の素晴らしいところは密室トリックだけではない。二人の探偵による推理合戦や、巧妙に張り巡らされた伏線と物語の緻密な構成にも注目である。
ちなみに現在、『黄色い部屋の謎(創元推理文庫)』と『黄色い部屋の秘密(ハヤカワ・ミステリ文庫)』とタイトルが微妙に違う2種類があるが、読みやすさを重視するなら新訳版の『黄色い部屋の秘密』の方がおすすめ。
7.『三人の名探偵のための事件』
タイトルの通り、三人の名探偵が密室事件に挑む多重解決ミステリ。
多重解決といえばバークリーの『毒入りチョコレート事件』が有名であるが、それとはまた違うタイプの推理合戦が楽しい一作。
完全にミステリマニア向けの作品であり、登場する三人の名探偵はそれぞれ、エルキュール・ポアロ、ピーター・ウィムジー卿、ブラウン神父を意識して描かれている。
どう読んでも、ミステリ初心者におすすめできる内容ではない。
ではなぜ今回ご紹介したかって、やっぱりこの密室トリックが大好きだからだ。
8.『帽子から飛び出した死』
密室殺人や人体消失、密室談義やらうんちくやら、読者を楽しませるような要素が満載の古典。
探偵がマジシャンであり、容疑者も心霊学者や奇術師、腹話術師などクセの強い者ばかりで一筋縄にはいかない。
正直に言ってしまうと、明かされる真相はそれほど驚愕するものではないのだが、なぜこんなに面白いかって「見せ方」が巧いからだ。
「ああ、この著者は面白いことをやってくれるなあ」という気持ちで読んでほしい。
なんて油断していると、フーダニットにやられる。
9.『自宅にて急逝』
クリスチアナ・ブランドの密室といえばコレ。
トリックそのものより、真相を読者に気がつかせない演出が凄まじい。「なんで気がつかなかったんだ!」という驚愕が残る。
①白鳥の湖邸と呼ばれる豪邸に一族が集まる。
②富豪のおじいさんが遺言状を書きかえると言って引きこもる。
③しかし翌日に死体ととなって発見される。
という良い意味で典型的な展開。
そこに王道の〈足跡なき殺人〉とくるのだから、本格好きなら読まないわけにはいかない。終盤の緊迫感も最高だ。
一族同士で行われる推理合戦も見どころの一つ。一族同士の争いなのにどこかユーモアがあって、あまりドロドロしていないのも嬉しいポイントである。

『自宅にて急逝』
10.『衣裳戸棚の女』
トリックがすごい、というかアイデアが逸材。
初めて読んだ時は「やられた!」と叫ぶと同時に大笑いしてしまった。
密室となった部屋で射殺死体が発見され、さらにその部屋の衣裳戸棚にはウェイトレスが閉じ込められていた、という不思議な密室を扱っているわけだが……。
「戦後最高の密室ミステリ」という紹介はハードルを上げすぎだ、という意見もあるけれど、私はあながち間違っていないと思う。
全体的にユーモアがあって堅苦しくなく読めるし、予想外の方向へと二転三転する展開がとても楽しい一作だ。
11.『モルグ街の殺人』
「史上初の推理小説」であり、密室殺人を扱った初めての作品である。
これはもうトリックが凄いとか、アイデアが凄いとか、そういうものではなく、「まさかの真相」をぜひ楽しんでほしい。「史上初でコレやっちゃうの?!」と驚いていただけるだろう。
モルグ街にあるアパートで起きた残忍な事件、名探偵の登場、語り手となる助手、探偵を引き立たせる無能な警察の存在、そして意外な真相。
推理小説の定番を築き上げた、というだけでもその価値は計り知れない。
12.『下り“はつかり”―鮎川哲也短編傑作選』
鮎川哲也(あゆかわ てつや)さんの傑作短編が収められた作品集であり、この中の『赤い密室』という短編が「素晴らしい」の一言では済まされないくらいの傑作なのだ。
短編ながら恐ろしいほどの完成度であり、国内の密室モノでの最高峰と言っていい。必読中の必読である。
他にも密室モノではないが、『達也が嗤う』 『誰の死体か』などの名作が収録されている。死ぬまで手元に置いておきたい一品と言えよう。

13.『姑獲鳥の夏』
京極夏彦(きょうごく なつひこ)さんによる〈百鬼夜行シリーズ〉の1作目。
他の作品ではまずお目にかかれない「密室からの人間消失」に注目である。度肝を抜かれるし、そんなのありかよ、とも思う。
文庫でも600ページ超えのボリュームであるので手に取りにくいのもわかるが、せめてこの『姑獲鳥の夏』だけでも頑張って読んでみよう。
「最初は敬遠していたけど読み終わる頃にはすっかりどハマりし、時間を忘れて貪るように続編を読み始めてしまう」というのは〈百鬼夜行シリーズあるある〉なのだから。
14.『哲学者の密室』
笠井潔(かさい きよし)さんによる〈矢吹駆シリーズ〉の第4弾。
基本的に、矢吹駆シリーズに登場する密室はどれも面白い。全部紹介したいくらいだ。
しかし「すごい密室」として一つだけあげるなら、やはりこの作品だろう。
文庫にして1100ページ越えの大作であり、間違いなく読みやすくはないが、その強烈な読後感を与えてくれる。
メインとなるのは、現在と、そして30年前の〈三重密室〉の謎。矢吹駆の推理力に圧倒されよう。
15.『雪密室』
タイトル通り、足跡のない雪に囲まれた密室を扱った本格モノ。
トリックそのものも非常に王道であり、ミステリを読みなれている方ならわかってしまうかもしれない。
だがそれがいい。このオーソドックスな感じ。ミステリを読み始めた頃を思い出させてくれる。
この「古き良き雪密室」というものを一度は味わっていただきたい。
16.『斜め屋敷の犯罪』
奇想天外な密室トリックが爆裂した、島田荘司(しまだそうじ)さんによる〈御手洗潔シリーズ〉の2作目。
最初から傾けて建てられた、という奇妙な屋敷「流氷館」を舞台にした〈館モノ〉の傑作である。
初めて読んだ時の「そんなバカな!」という衝撃は今でも残っているし、今改めて読んでも「すごいトリック考えるなあ」と思う。
あまりにぶっ飛んでいるので評価が別れるのも納得であるが、この衝撃は一度味わっておかなければ損をする。
読み終わったあと、『斜め屋敷の犯罪』というタイトルの絶妙さに気がつき、ため息がでた。
17.『七つの棺―密室殺人が多すぎる』
「叙述トリックの名手」とも呼ばれる折原一(おりはら いち)さんの短編集。
収められてる短編全てが密室モノであり、古典名作をパロディしたものになっている。
なのでトリックの新しさや衝撃はやや薄いかもしれないが、遊び心満載の非常に楽しい作品である。肩の力を抜いて読もう。

17.『翼ある闇』
麻耶雄嵩(まやゆたか)さんによる〈メルカトル鮎シリーズ〉の1作目。
ハチャメチャな、破天荒な、衝撃的な大トリックを味わいたいならコレ。
「驚愕」という言葉がふさわしい展開が待ち受ける、国内ミステリにおいても屈指の名作である。
シリーズはどれも面白いけれど、まずはこの作品から読もう。
密室以外にも、首なし死体、見立て殺人、名探偵の登場、蘇る死者など、本格好きにはたまらない要素が溢れている。
とにかく普通ではないけど、ミステリが好きなら絶対に読んでほしい一品。
19.『三毛猫ホームズの推理』
赤川次郎さんを代表する〈三毛猫シリーズ〉の1作目であり、シリーズ最高傑作の一つ。
シリーズを何から読むか迷ったら、これを読んでおけば間違いない。
まさかまさかの大胆な密室トリックには本当に衝撃を受けたし、「密室モノってこんなに面白いんだ」と思わせる魅力が満載だった。
非常に読みやすいが、最後の展開は、ズシンと心に響く。

20.『吸血の家』
二階堂黎人(にかいどう れいと)さんの〈二階堂蘭子シリーズ〉の2作目。
江戸川乱歩や横溝正史のような雰囲気を漂わせ、かつディクスン・カーを意識した古き良き王道ミステリー。
過去に起きた密室事件、そしてこれから起こる密室事件の両方を蘭子が解決していく。
どの密室も魅力だが、特に「足跡なき殺人」のトリックが絶品。思わず心の中で拍手をしてしまった。
21.『ラン迷宮 二階堂蘭子探偵集』
続いても二階堂黎人さん。3編からなる作品集。
『泥具根博士の悪夢』に使われた、四枚の扉と雪の足跡で出来上がった〈五重の密室〉がかなり見もの。
同じく、『蘭の家の殺人』にも巧妙な密室トリックが使われている。
今作に限らず、二階堂黎人さんの作品は密室トリックが多く使用されているため、密室好きならいろいろ読み漁ってみよう。
蘭子シリーズでいえば、先ほど紹介した『吸血の家』の他に、『聖アウスラ修道院の惨劇』や『悪霊の館』、世界最長の推理小説である『人狼城の恐怖』などの初期作品がおすすめだ。
22.『密室の如き籠るもの』
三津田信三(みつだしんぞう)さんによる〈刀城言耶シリーズ〉の第1短篇集。
この中の表題作(中編)が密室モノとして逸材である。カーを彷彿とさせる刀城言耶の「密室講義」も楽しめる贅沢っぷりだ。
〈刀城言耶シリーズ〉らしい二転三転からのどんでん返しも健在しており、ファンのみならずこれからシリーズを読みたいという方にもおすすめの一作。
この雰囲気を楽しめたのなら、ぜひ長編一作目から順番に読んでみてほしい。

23.『念力密室!―神麻嗣子の超能力事件簿』
基本的に密室モノというのは「どうやって密室を作ったのか?(ハウダニット)」に焦点を当てられることが多い。
が、この作品では登場するのは「超能力で作られた密室」であり、密室が作られた方法はあまり重要ではない。
つまり「どうやって密室を作ったのか?」ではなく「なぜ密室を作ったのか?(ホワイダニット)」に特化した短編ばたりが収められているのだ。
非常にユニークな設定とキャラクターであるが、ミステリの質は本物。
『七回死んだ男』や『人格転移の殺人』など、SF設定を取り入れたミステリが得意な西澤保彦さんらしい作品である。
24.『本陣殺人事件』
横溝正史の代表作であり、名探偵・金田一耕助の初登場作品。
足跡のない雪で囲まれていた、いわゆる「雪の密室」を扱った傑作である。
不向きとされていた〈日本家屋での密室殺人〉を初めて描いた作品としても有名。
本作で扱われる密室トリックにはまず衝撃を受けるが、ミステリを読むうえでは誰もが通る道なので、安心して受け止めてほしい。
というか密室など関係なく、国内推理小説を読むなら絶対に欠かせない作品なのだ。未読であれば最優先で読もう。

25.『刺青殺人事件』
これもまた、密室モノを読む上で外せない傑作である。
高木彬光(たかぎ あきみつ)さんの代表作であり、日本三大名探偵の一人・神津恭介の初登場作。
完全な密室となった浴室で胴体のない死体が発見されるのだが、「密室にした方法」と「なぜ密室にしたのか」の絡ませ方が最高なのである。
しかも密室トリックだけでなく、それをより効果的にするミスリードのさせ方と伏線の敷き方が!もうとんでもないことに!ああ、歓喜。
このほか、神津恭介の密室モノであれば、『呪縛の家』『能面殺人事件』あたりはぜひ読んでおこう。
26.『世界は密室でできている。』
密室モノ、と見せかけた青春小説。
確かに密室殺人はたくさん起きるんだけど、決してメインではなく、推理小説を読もうとして手に取ると大変なことになる。
ミステリを読み始めたはずなのに、「ああ、とんでもない青春小説を読んでしまった……」という読後感を味わうことになるのだ。思わず感動してしまうほどに。
間違いなく舞城王太郎さんの名作の一つなので、密室とか関係なしに読んでみてほしい。
これぞ舞城王太郎!なのだ。ページをめくる手が止まらない、とは、まさにこの事を言う。
27.『すべてがFになる』
これほど大胆で壮大な密室もあるまい。
森博嗣(もり ひろし)さんによる〈S&Mシリーズ〉の1作目。
孤島に佇む研究所で、天才博士が殺害される。しかも現場は完璧な密室であり、死体は両手両足が切断されウェディングドレスを着せられていた。
この異様な殺人に、N大学工学部建築学科助教授・犀川創平と、その教え子・西之園萌絵が挑む。
読み終わると、『THE PERFECT INSIDER』というサブタイトルがいかに優れているかがわかる。
他にも〈S&Mシリーズ〉では多くの密室殺人が扱われるので、以下の記事を参考にしてぜひ読んでみてほしい。

28.『女王の百年密室』
続いても森博嗣さんの作品であるが、先ほどの『すべてがFになる』のような本格モノとは大き異なる。
とにもかくにも普通の密室ミステリではなく、〈本格ミステリ〉とはかけ離れた〈森ミステリィ〉な作品。
「作られて百年、一人の死者も出ていない」という都市〈ルナティック・シティ〉にたどり着いたミチルは、そこで奇妙な密室殺人に巻き込まれる。
人が死ぬことがない、つまり「死」の概念が消失した世界での密室殺人を描いた特殊極まりない作品である。
29.『虚無への供物』
夢野久作『ドグラ・マグラ』、小栗虫太郎『黒死館殺人事件』と並び「三大奇書」と称される名作。アンチミステリとしても有名。
というワケで決して読みやすいとは言えないけれど、「奇書」っていうほど難解ではなく、濃厚なミステリとして非常に面白い。
連続する密室殺人はもちろん、二転三転する「推理合戦」も見もの。というか、どちらかといえば「推理合戦」がメイン。
アンチミステリと言われるだけあって万人受けはしないけれど、人生で一度は読む価値がある作品である。
30.『亜愛一郎の狼狽』
泡坂妻夫(あわさか つまお)さんによる〈亜愛一郎シリーズ〉の1作目。
非常にユニークなキャラクター・亜愛一郎(あ あいいちろう)の活躍が楽しい、8編からなる短編集である。
『ホロボの神』や『曲った部屋』など高水準な短編が多い中でも、『右腕山上空』の〈空中密室〉はぜひ目にしておきたいところ。
このシリーズは密室モノに限らず優れた短編ばかりなので、ミステリが好きなら読んでおくことを強くおすすめする。
あとがき
というわけで、「密室が凄いおすすめミステリー小説」の紹介であった。
我ながらナイスチョイスだと思っている。
もしも読んだことがない作品があるのなら、そして『密室』というものに興味があるのなら、ぜひお手にとってみてほしい。
ご満足いただけることを願う。
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