海外ミステリを読む上で絶対に外せない作家の一人がF・W・クロフツである。
面白いクロフツ作品は多くあるが、今回はその中でぜひ読んでおきたいオススメ作品を3作品に選んでみた。
どれから読めばいいかわからない、海外ミステリの名作をとにかく読みたい、という方の参考になれば幸いです。
1.『スターヴェルの悲劇』
『樽』と並ぶ傑作だと思うし、クロフツ最初の一冊にもおすすめの作品。クロフツ中期の代表である。
屋敷が火事になり、焼け跡から主人と召使いの焼死体が発見されたという事件。一見ただの事故のように見えるが、この事件を疑問に思う人物がいた。はたしてコレは事故か、殺人か。
クロフツといえば「アリバイ崩し」をメインとしたものが多いのだが、今作はフーダニット(犯人は誰?)ものなので馴染みやすい。
それでいてクロフツの巧さもしっかり表現されているし、終盤に向かっての収束間と予想できない結末も楽しい。
トリックも冴えているし、つまりは純粋に面白いミステリ小説なのだ。正直『樽』より好きかもしれない。
クロフツはどれを読めばいいかな?と迷ったらとりあえずコレを読んでおけば間違いない。
この作品を読んで「クロフツ面白い!」と思えたなら、どんどん他の作品も読んでみよう。
2.『樽』
積荷の樽を落としてしまったら、中から金貨と死体が発見された。誰が、なんの目的で。
なんといっても『樽』である。
クロフツといえば樽である。樽といえばクロフツである。鮎川哲也さんの名作『黒いトランク』も『樽』に影響を受けて書かれたとされている。
というくらい有名でほぼ「必読」と言って良い作品なのだが、クロフツ最初の一冊におすすめできるかというと悩ましい。
なぜなら「テンポが遅め」だから。超地味なのだ。
重厚な物語のためじっくり読む分には最適なのだが、一発目がコレだとやや退屈に思われてしまうかもしれない。挫折する恐れがある。
じゃあ面白くないの?と思われるかもしれないが、とんでもない。名作と呼ばれるだけあって面白いことには間違いない。ただ最初の一作には微妙かな?という感じ。
何冊かクロフツを読んで慣れてきたら読むのがベストでしょう。
でも、2013年に新訳版が出たおかげでだいぶ読みやすくなったんだよ!
3.『クロイドン発12時30分』
フランシス・アイルズ『殺意』、リチャード・ハル『伯母殺人事件』と並び「世界三大倒叙ミステリ」と称されるものの一つ。
倒叙ミステリとは、主に犯人の視点で進められていくミステリのこと。犯人がわかっているため、探偵がどうやって犯人を追い詰めるのか、が見所となる。
正直言っていま読むと「めっちゃ面白いやん!!」とはならないだろう。当時読めばもっと楽しめたと思うが、現代はもっと面白いミステリが多く存在するからだ。
だけど!
「倒叙の古典名作」とか「倒叙の教科書」と言われるとどうしても読んでおきたくなるものだ。単純に物語も面白いし、地味ながらまとまりがあって良い。
そういった意味では一度は読んでおきたいね。
他のおすすめ作品は?
基本的にクロフツの作品はそこまでハズレのものがない。
長編作品であれば『英仏海峡の謎』『サウサンプトンの殺人』『フレンチ警部と紫色の鎌』辺りがおすすめ。
もし長編を手に取りづらかったら短編集の『クロフツ短編集2』をおすすめするよ。
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