今ままで読んできた実話怪談集の中で最高に恐ろしかった作品が、拝み屋シリーズの『拝み屋郷内 花嫁の家』である。
実話怪談集とは、著者が実際に見聞きした恐怖体験をまとめた書物のこと。
ホラー小説とは違い「すべて実際に起こったこと」という先入観が余計に怖さを煽るのだ。
そして今回ご紹介させていただく〈拝み屋シリーズ〉というのは、そんな実話怪談集の中でも群を抜いた怖さを誇るシリーズとなっている。
特に二作目の『拝み屋郷内 花嫁の家』は衝撃的な作品なので、「怖い話」がお好きであれば真っ先に読んでみてほしいのだ!
拝み屋シリーズって何?
〈拝み屋シリーズ〉とはその名の通り、拝み屋を営む郷内心瞳(ごうない しんどう)さんが、実際に見聞きした体験が書かれた実話怪談集である。
そして〈拝み屋〉とは、
家内安全に交通安全。安産祈願や合格祈願。地鎮祭に屋敷祓い。先祖供養にペット供養。
平素、私が手がける仕事の大半は、概ねこのような感じである。実務自体は山もなく谷もなく、依頼人から乞われるままにただひたすら、無心で拝むのが常である。
『拝み屋郷内 花嫁の家』2ページより
という感じであり、決して怪奇現象を専門とした職ではないようだ。
しかし、郷内さんの周りにはこんなにも怖い話が集まってしまうのである。恐ろしい。
『拝み屋郷内 怪談始末』
実話怪談集とは基本、順番に読まなくても良いものが多いが、このシリーズは順番に読むことをおすすめしたい。
ますはシリーズ一作目の『拝み屋郷内 怪談始末』である。
郷内さんが「人から聞いた恐怖体験」と「郷内さん自身が体験したお話」がいくつも収められている。
よくある実話怪談集のようで、そうではない。
一味違う実話怪談集
リアルさ、とでもいうのか、気持ち悪いくらいに密度が濃いのだ。
中でも郷内さんの体験談である『桐島加奈江』というお話がヤバイ。
郷内さんが夢の中で出会ったある少女の話なのだが、これは怖いを通り越している。
ぜひこれだけでも読んでいただきたい。
そしてこの作品の最後には、シリーズ二作目の『拝み屋郷内 花嫁の家』にまつわる話が含まれている。
なのでこれを読み恐怖心を一気に高めたところで、続けて二作目を読むのがベストな形となる。
『拝み屋郷内 花嫁の家』
さて、問題の作品である。
今まで数多くの実話怪談集というものを読んできたが、これは別物。格が違うのだ。
これまでの間、語ろうとするたび、あるいは記録に書き残そうとするたび、様々な怪異や変事に見舞われ全容開示をことごとく妨害され続けてきた、曰くつきの怪異憚「母様の家、あるいは罪作りの家」。並びに私がこれまで手がけた仕事の中でも取り分け忌まわしく、そして忘れ難き記憶にもなってしまった「花嫁の家、あるいは生き人形の家」。
それらをひとつに収めたのが、本書『拝み屋郷内 花嫁の家』である。
4ページより
郷内さん曰く、地味な仕事が多いはずの拝み屋が、一万分の一、あるいは十万分の一の確率で”例外”に出会ってしまうという。
それがこのお話というわけだ。
濃厚すぎる一章
本書は「母様の家、あるいは罪作りの家」と「花嫁の家、あるいは生き人形の家」の二章からなるのだが、その構成が素晴らしいのだ。
まず第一章のはじめは、よくある実話怪談集のように短いお話が淡々と語られていく。
あれ、普通じゃん。と思うのだ。
しかし読み進めていくと、次第に違和感に包まれていく。
「ん、このお話、もしかして……」
そうなったらもう終わりである。完全に物語に引き込まれ、本書を途中で閉じることなんてできない。超怖いのに。
本書の三分の二はこの一章で構成されており、実話怪談集でありながら濃厚さが尋常ではないのだ。
この章だけでも何度衝撃を受けたことか。。
戦慄の二章
続く第二章〈花嫁の家、あるいは生き人形の家〉は、嫁いだ花嫁が3年以内に必ず死ぬ、という祟りに悩まされている家系のお話。
そんな祟りがあるとわかっていながらも、愛する人のために覚悟して嫁に入った霞さん。
しかし、嫁いでみてやっとわかった。この祟りは嘘ではない。どうお祓いしようと、日増しに恐怖が募ってくるのだという。
そこで助けを求めて、郷内さんの元にやってきたということである。
これも当然怖い、というか気持ちが悪い。
ネタバレしたくないのでこれ以上は言えないが、一章を読めば間違いなく読みたくなる。
読んでいる途中、本当に何度もトリハダがたってしまうのだ。後味も強烈であり、読んだ後はしばらく呆然としてしまった。
おわりに
この後には、三作目『拝み屋怪談 逆さ稲荷 (角川ホラー文庫)』、四作目『拝み屋怪談 禁忌を書く (角川ホラー文庫)』へと続く。
最初の方にも述べたが、この〈拝み屋シリーズ〉はぜひ順番に読んでいただきたい。
なぜなら、前の巻の話が絡んでくることがあるからだ。「え!この話まだあるの!」ってなる。この繋がりがわかると余計に怖いのだ。
何度も言うが、二作目の『拝み屋郷内 花嫁の家』はガチである。
怖い話がお好きであれば、最低でもこれだけは読んでいただきたい。
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