海外ミステリ小説おすすめ名作・傑作50選【2021年版】

本当に面白いおすすめ海外ミステリ小説を50作品に厳選した。

絶対読んでおきたい古典から最新の作品まで揃っている。

面白い推理小説をお探しであれば、今回ご紹介する作品の中から優先的に読むことをおすすめしたい。

 

【SF小説おすすめ50選】死ぬまでに読んでおきたい名作・傑作集

目次

1.『湖畔荘』

 

2018年版このミステリーがすごい!海外編で4位となった傑作。私的には一位にしたいくらい素晴らしい作品であった。

ロンドン警視庁の女性刑事セイディは問題を起こし、謹慎処分を受けることとなる。

ロンドンを離れ、コーンウォールの府祖父の家で過ごしていると「湖畔荘」という屋敷を見つけた。

その屋敷では70年前に赤ん坊が消える事件があり、気になった彼女はその事件を調べることになるのだが……。

謹慎処分を受けるきっかけとなった事件、自分自身の問題、70年前の事件が絡み合い、驚くような結末へと向かっていく。

複雑なストーリーなのに読者を混乱させない構成は見事という他ない。

同じ出来事でも人によって見え方、受け取り方が違う、という当たり前のことがポイントになってくる作品だ。

2.『黒い睡蓮』

 

2018年版このミステリーがすごい!海外編で5位となった、とにかく衝撃度の高い一作。

モネの睡蓮で有名な村で、奇妙な殺人事件が起こる。

殺された眼科医は大の女好きで絵画のコレクターでもあった。殺人の動機は愛憎絡みか、それとも絵画の取引に関する怨恨か……という一見よくあるストーリー展開。

しかし、ほとんどの読者が騙されてしまうのだ。

途中で「あれ?何かおかしいぞ」と違和感があると思うが、それが何かわからない。最後にネタばらしがあった後でようやく「なるほど!」とスッキリした気持ちになれるのだ。

あえて騙されるために、何の予備知識もない状態で読むのがベストである。

3.『ウッドストック行最終バス』

 

「モース警部シリーズ」のひとつである。

ヒッチハイクをした二人の女性のうち、一人が死体となって発見された。

もう一人はどこに。まだ生存しているのか?

探偵役となるモース警部が仮説を立て、検証していく。

その繰り返しなのだが、つまりは読者にとってはミスリードがばら撒かれるということであり、あっちこっち揺さぶられるのがとても楽しいのだ。

さて、このモース警部だが、妙にモテモテである。なので、男性としては嫉妬してしまう部分もあるかもしれない。気をつけよう。

スマートな名探偵が謎解きをするという感じではなく、人間味あふれるモース警部がインスピレーションや妄想で試行錯誤していく形で話が進んでいく。

読み進めていく中でミスリードされてしまうポイントも多く、どれが本当の手がかりなのかわからなくなってしまうだろう。

最後まで読者も一緒に楽しめる作品なのである。

4.『死者たちの礼拝』

 

続いてもモース警部シリーズのひとつ。

モース警部シリーズの中でも、難解なものとして知られている。

モース警部の相棒であるルイスが馴染んできた頃に起こる事件であり、モース警部に振り回されるルイスが少し不憫になるという方も多い。

仮説を立ててはうまくいかず、仮説を立ててはうまくいかず……という繰り返しで、モース警部と一緒に悩むことができのも見所のひとつでもある。

きちんとしたストーリーラインは1本通っているが、設定がかなり凝っており、内容は濃い。

ゆっくりと読み進めればよかったと後悔する方も多いので、焦らず丁寧に読み進めていくことをおすすめする。

5.『キドリントンから消えた娘』

 

2年前に失踪した女子高生バレリーから突如、両親へと手紙が届く。

元気だから心配しないで、と書かれた素っ気ない手紙だったが、モース主任警部は「バレリーは死んでいる」という直感を抱いた。

モース警部は推理と仮説の間で「あーでもないこーでもない」と悶絶するが、実はまさかの推理がラストでからんでくるという予想できない展開が楽しめる。

生真面目さはあるものの、ちょっとダメなところもあるという人間味あふれる描写が魅力だ。

結末はスッキリしているとは言いにくいが、それが読み終わった後の何とも言えない余韻になっている。

6.『シャーロックホームズの冒険』

 

シャーロックホームズシリーズは何から読むのが良いか?という問いに対して、私はこの『シャーロックホームズの冒険』を推奨する。

一作目の長編『緋色の研究』から読むべき、という意見もあるようだが、『冒険』の方が明らかに読みやすいし、いろんなホームズの楽しさが詰まっているのだ。

つまりホームズを知らない人にとっての最初の一冊に最適なのである。

テレビドラマなどの影響もあり、「複雑なトリックがちりばめられているのでは……」と思う方も多いだろうが、読み進めてみると思っている以上にシンプルなトリックであることがわかる。

ゆえに、読者もきちんとトリックの内容や意味を理解していくことができる。

長編になると人間性や人間関係なども掘り下げられるのだが、短編だからこそ起承転結が明確でサクサクと読み進めていけるのだ。

7.『偶然の犯罪』

 

絶妙なタイトルである。

主人公となるのは、真面目な教師・コンラッド。

彼はある殺人の容疑をかけられてしまい、しかも警察に嘘をついたことでどんどん追い詰められてしまう、というサスペンスもの。

もともとコンラッドが嘘をついてしまったのがいけないのだが、立場上、そうせざるを得なかったコンラッドのことを考えると何とも言えない気持ちにもなる。

最近ではちょっとしたことでも大炎上してしまう世の中であるが、何かが起こったとき、そこにどのような背景があるのかを考えるよいきっかけとなる作品かもしれない。

推理小説というよりコメディ小説に近い展開で楽しく読めるが、自分がコンラッドだったら……と考えると笑えなくなる。

8.『女には向かない職業』

 

探偵というと男性のイメージが強いが、『女には向かない職業』では若き女探偵が活躍する。

ストーリーは、コーデリア・グレイの共同経営者であり師匠でもある人物が自殺してしまうところから始まる。

コーデリア・グレイは探偵事務所を引き継ぎ孤軍奮闘していくわけだが、若い女探偵ということもあって、とても健気で可愛らしいところもある。

この愛らしい性格のおかげで、多くの人はすぐにファンになってしまうことだろう。

この作品では何気ない描写が後からしっかりと意味を持ってくるといった部分が多く、読み進めれば進めるほど驚きが待っている。

ラストにかけてはまさに怒涛の展開。休憩はほどほどに一気に読み進めてほしい作品だ。

続く『皮膚の下の頭蓋骨』も一緒に読むとなお良い。

9.『衣装戸棚の女』

 

「戦後最高の密室ミステリ」と呼ばれている作品。

そのわりにはあまり知られていないのだが、まさに傑作と呼ぶにふさわしい作品である。

密室殺人が起こり、それを解決していくという、いたって普通の流れなのだが、ストーリーが二転三転する上に、結末がとんでもないところに着地するのだ。

これまでいろいろなミステリを読んでいる方でも、初見でこの結末は予測できないだろう。

ミステリというとシリアスな雰囲気を思い浮かべる方も多いが、本作は全体にユーモラスな雰囲気が漂っているので楽しみながら読み進めることができる。

衣装戸棚の女

10.『ホッグ連続殺人』

 

ミッシング・リンクものの傑作である。

新聞記者のビューアルの目の前で事故が起こり、その後、「HOG」を名乗る犯人から手紙が届くというところからストーリーは動き出す。

ニューヨーク州スパーダ町では連続殺人事件が発生し、それに天才犯罪研究家のニッコロウ・ベネデッティ教授が挑む。

ひとりひとりのキャラクターが魅力的で、やはりニッコロウ・ベネデッティ教授は読者の間でも人気が高い。

「HOG」が何を意味しているのかについては読者も一緒に考えていくことになるのだが、この作品では「HOG」の意味を示すラストの1文がとても高く評価されている。

とにかく、ラスト一行の決まり具合が最高なのだ。

11.『二壜の調味料』

 

タイトルとなっている作品を含めた短編集。

とにもかくにも、江戸川乱歩が絶賛したという表題作『二壜の調味料』が絶品なのだ。

読後に背筋がゾワゾワっとするような後味を残す、「奇妙な味」作品としても有名である。

容疑者となっている男は「なぜ、急に庭の木を切り倒し始めたのか?」に対しての回答に鳥肌が立つ。

この短編集で、結末がハッキリと語られる作品は少ない。あいまいな形のまま終わる作品が多く、それが読んだ後の余韻につながっていくのである。

不思議なことに文章として明確に描かれているわけではないものの、作者と読者の頭の中にあることは同じだろうと思わせる何かがある。

読み進めながら作者と感覚を共にしていくというのが本当に不思議で、記憶にこびりつくような作品という表現がぴったりだろう。

12.『誰の死体?』

 

貴族探偵ピーター・ウィムジイ卿が活躍するシリーズの第一弾。

ピーター・ウィムジイ卿の知り合いに実直な建築家がおり、その建築家の住むフラットの浴室に見知らぬ男の死体が出現することで物語は大きく動き出す。

まさにタイトルそのまま、『誰の死体?』というわけだ。

はちゃめちゃなピーター・ウィムジイ卿と真逆ともいえる真面目さや慎重さを持っているパーカー刑事など、それぞれのキャラクターがかなり立っていて読んでいて楽しい。

基本的には理詰めでストーリーが展開していくのだが、ちょっとした会話のやりとりにも面白さがあって最後まで飽きさせることがないのだ。

13.『死の接吻』

 

野心家の青年が財産目当てに大富豪の娘を次々と手玉に取り、その中で殺人を犯すという一見よくあるストーリー。

しかし、この作品は構成がかなり凝っている。

「ドロシイ」「エレン」「マリオン」という3部から構成されており、それぞれで語り手も構成も違う。そのため、1冊で3回楽しめる作品ともいえるのだ。

ほとんどの読者が最初から犯人はわかっている状態で読み進めるのだが、読み進めることによって混乱させられるという奇妙な面白さがあるのだ。

つまり、「最初から犯人はわかっている状態なのに、犯人は読み進めないと絶対にわからない」という謎の現象に包まれることになる。

14.『そして誰もいなくなった』

 

ミステリ好きな人間なら誰もが知っている傑作。

クリスティファンの中でも特に人気の高い作品である。

イギリスのデヴォン州、インディアン島に年齢も職業も異なる8人の男女が招かれる。島には2人の召使いがいたのだが、その召使いも含めて次々と殺されていく。

そしてタイトル同様に、最後には島に生きている人間がいなくなってしまうのである。

犯人はどこに行ったのか。

映像化もされているので真相を知ってしまっている人も多いと思うが、実際に文字で読んでみるとやはり違った魅力も溢れている。

ぜひ原作を手にとってほしい。

15.『アクロイド殺し』

 

続いてもクリスティ。

有名なエルキュール・ポアロシリーズのひとつで、シリーズとしては3作目の傑作である。

ポアロの隣人であるジェイムズ・シェパード医師による手記、という形でストーリーは展開していく。

読んでいる中で「この人が怪しいな」「こいつが犯人だ!」と思うこともあるだろうが、事件の真相を知れば驚くこと間違いなしだ。

この作品に関しては、読者に対してフェアなのかどうかという部分が議論されることがよくあるが、そういったことを抜きにしても十分楽しめる作品だろう。

とにかく驚愕したいなら読むべし。

16.『毒入りチョコレート事件』

 

作者アントニー・バークリーのシリーズ探偵のひとりであるロジャー・シェリンガム。

彼が率いる犯罪研究会に、スコットランド・ヤードのモレスビー首席警部から未解決の毒殺事件が報告されるところからストーリーが展開していく。

アントニー・バークリーのシリーズ探偵のアンブローズ・チラウィックも登場し、ひとつの毒殺事件に対して結果的に8件もの推理がもたらされることになる。

ひとつの事件にそれぞれが違ったアプローチで推理をするという「多重推理」こそ、今作最大の魅力なのだ。

読者にとっては後出しとなる情報もあるが、だからこそ先が読めずに楽しむことができる作品となっている。

17.『ジャンピング・ジェニイ』

 

人気作家の家で開催された仮装パーティで、周りから嫌われていた女性が絞首台にぶら下がって死んでいた。

ロジャー・シェリンガムが名推理を繰り広げてくれるのかと思いきや、これがとんだ迷推理となってしまうのだ。

名探偵ではなく、迷探偵となってしまうロジャー・シェリンガムの滑稽さには読者もニヤニヤしてしまうだろう。

ここまでオロオロして右往左往する探偵というのは、他作品ではあまり見られないものだ。

ブラックユーモアに効いた作品なので好き嫌いが分かれるかもしれないが、私のとっては最高の一冊となっている。

18.『幻の女』

 

スコット・ヘンダーソンは妻のマーセラというものがありながら、キャロル・リッチマンと愛し合っていた。

マーセラに離婚を申し出るつもりだったものの、マーセラは話し合いを拒否し、スコットは家を飛び出す。

そしてスコットはバーで「幻の女」と出会うのだが、帰宅するとマーセラが殺されており、スコットは逮捕されてしまうのだった。

しかしスコットには「幻の女」と一緒に遊んでいた、というアリバイがあった……はずだったのだが。

なんと、街の人々は「その時スコットは一人でいた」と証言したのだ。

幻の女はどこに……。

タイトルにもなっている「幻の女」によって事件の関係者が振り回されて、ラストはまさかの結末となっている。

「敵をだますならまずは味方から」という言葉を噛みしめることになるだろう。

19.『グリーン家殺人事件』

 

閉鎖的な館での連続殺人事件と言えばこれ。本格ミステリーはいいなあ、と改めて思わせてくれる1冊である。

ニューヨークの街中にある5人の子どもたちが住む古邸グリーン家が舞台。

いがみ合っている子どもたちのうち、2人の娘が何者かによって銃撃されるところからストーリーが展開していくわけだが、読者にとっては犯人が予想しやすい作品である事でも有名だ。

ただ、犯人を予想しやすい部分があっても、具体的にどのような方法をとったのかというところはなかなかわからない。

そのため、犯人がわかってしまってもドキドキしながら読み進めていくことができるのだ。

本書を読み、主人公となる素人探偵ファイロ・ヴァンスの厭味ったらしいキャラクターにハマってしまう方も多い。

20.『僧正殺人事件』

 

続いてもヴァン・ダインの代表作。見立て殺人の元祖である。

高名な物理学者ディラード教授の邸宅周辺で、弓術選手のジョーゼフ・コクレーン・ロビンの死体が見つかることで物語は動き出す。

この『僧正殺人事件』はとにかく内容が濃く、情報量が多い。

そのため、前半か中盤にかけては読み進めるのも大変かもしれない。しかしながらその分、後半に入ってくると読み進めやすくなり、怒涛の展開にページをめくる手がとまらなくなるのだ。

上にもご紹介したように、ヴァン・ダインなら『グリーン家殺人事件』と『僧正殺人事件』の2作品は優先的に読んでおこう。

21.『黒後家蜘蛛の会』

 

SFの巨匠アイザック・アシモフによる傑作短編集。

舞台となるのは、ニューヨークのミラノ・レストラン。

月に1回、タイトルにもなっている「黒後家蜘蛛の会」がここでおこなわれる。

メンバーは化学者、数学者、弁護士、画家、作家、暗号専門家で、その中のひとりがホストを務め、1名のゲストが参加。そこには常にヘンリーが給仕につくことになる。

食事をしながらの四方山話の中には謎が提示され、その謎を皆で解いていくのだが、結局真相を言い当てるのは給仕のヘンリー。

基本的にはこの流れでいろいろな謎を紐解いていく作品で、ひとつのシリーズでありながら短編集にもなっているので、とても読みやすい作品だ。

22.『鋼鉄都市』

 

続いてもアシモフ。

舞台となっているのは、鋼鉄のドーム都市の中で80億もの人々がひしめき合う地球。

人間はスペーサーと呼ばれる宇宙人の支配下にいた。

ある日、ニューヨーク市警の刑事イライジャ・ベイリはある事件の捜査を命じられる。

それは地球の運命を左右する重大な事件で、R・ダニール・オリヴォーというロボットと一緒に捜査をすることとなる。

イライジャ・ベイリ刑事はロボット嫌いでとても人間的なのに対して、R・ダニール・オリヴォーはとても機械的。この凸凹コンビがとてもいい味を出してくれていて、堅苦しい雰囲気を取り払い楽しく読んでいただけるだろう。

アシモフお得意の「SFミステリ」に分類される作品で、発売から60年以上たった今もなお傑作として語り継がれている。

23.『薔薇の名前』

 

主人公となるのは、メルクのアドソと、メドソの師であるバスカヴィルのウィリアム(ややこしい)。

このふたりが探偵小説における「探偵」とその「助手」のポジションとなる。

舞台となるのは、1327年、教皇ヨハネス22世時代の北イタリアのカトリック修道院。

そこで起こる怪事件の謎をウィリアムとアドソが解いていく、という形でストーリーが展開していく。

聖書やキリスト教神学からの引用が多く、読みづらい作品ではあるのだが、そのぶん奥が深い。

推理小説の枠におさまらず、ほとんど宗教文学のようだ。

だからこそ、時間をかけてじっくりと読みたい一冊である。

24.『羊たちの沈黙』

 

映画も大ヒットしたのでタイトルは知っている方も多いだろう。

「バッファロー・ビル」という殺人鬼は、精神科医ハンニバル・レクターのかつての患者のひとりだった。

FBI訓練生のクラリス・スターリングは犯人に関する情報を得るために、投獄されているハンニバル・レクターと接触するという形でストーリーは展開していく。

基本的には「バッファロー・ビル」とFBIの攻防がメインになってくるはずなのだが、それでもハンニバル・レクターの存在感が圧倒的だ。

映画を観ている方も多いと思われるが、おそらくクラリス・スターリングの印象が大きく違ってくるはずだ。ぜひ原作も読んでみよう。

25.『招かれざる客たちのビュッフェ』

 

それぞれの短編がビュッフェのメニューに見立てられて構成されている短編集。

スリルに満ちた謎解きゲームやブラックストーリーなど、さまざまな味わいを楽しむことができる贅沢な一冊である。

クリスチアナ・ブランドの作品を初めて読む方にも強くおすすめしたい。

もちろんどの短編が好きかは人それぞれだが、結局全部好きになってしまう方もかなり多いと伺える。

毒が効いているのに小気味いい絶妙な感じは、一度味わうとクセになってしまうだろう。

『招かれざる客たちのビュッフェ』を筆頭に、他のブランド作品もぜひ手にとってほしい。

26.『モルグ街の殺人』

 

史上初の推理小説とされている表題作『モルグ街の殺人』を含む作品集。

タイトルにもなっている『モルグ街の殺人』では、語り手とC・オーギュスト・デュパンを中心に謎解きをおこなっていく。

このデュパンという人物は類まれなる観察力と分析力を持っており、その観察力と分析力から繰り出される推理というのは理にかなったものだった。

そしてまさかの結末には、誰もが言葉を失うことだろう。

確かに読みにくく古臭い部分もあるが、それがこの作品の魅力の一つなので、ぜひ最後まで読み進めてみよう。

27.『Xの悲劇』

 

エラリー・クイーンの代表作。

満員電車の中で、ニコチン液に浸した針を使った巧妙な殺人が発生。

被害者は多くの人から恨みを買っており、容疑者が次から次へと出てくる始末で逮捕の決め手に欠けていた。

サム警視とブルーノ地方検事はお手上げということで、元舞台俳優で名探偵のドルリー・レーンに協力を要請する。

本格推理の金字塔とも呼ばれる作品で、いわゆる悲劇4部作【『Xの悲劇』『Yの悲劇』『Zの悲劇』『レーン最後の事件』】の一作目となる。

読み進めていく中で各々が犯人を予想すると思うが、最初から犯人を的中させた人は数少ないだろう。

数々のミステリを読んでいる方にとっても読みごたえ抜群である。

28.『エジプト十字架の謎』

 

エラリー・クイーンによる国名シリーズの第5作目。国名シリーズの中でも最高傑作と名高い作品である。

ストーリーはいきなり奇妙な死体の発見から始まる。

ウエスト・ヴァージニアの片田舎でクリスマスの朝、T字路のT字型道標に首を切られT字に吊るされた死体が発見されるのだ。

ただ、決定的な証拠が得られないまま事件は迷宮入りし、半年後に第2、第3の殺人が起こる。

第4の殺人でエラリー・クイーンは犯人の正体を見破るのだが、やはり犯人の予想を裏切られる展開が待っている。

本作でエラリー・クイーンのキャラクターに惹かれ、大ファンになってしまう人も多い。

29.『黄色い部屋の秘密』

 

今なお語り継がれる密室トリックの最高峰。

スタンガーソン博士の邸宅には「黄色い部屋」があった。

その「黄色い部屋」でスタンガーソン博士の令嬢の悲鳴と銃声が聞こえる。

駆けつけると、そこには血まみれとなった令嬢の姿があった。

犯人のいた痕跡はあるものの、部屋は密室で……という形でストーリーが展開していく。

本書ではそれぞれタイプの違う探偵が登場し、ふたりの探偵による推理合戦が大きな見所である。

さらにこの作品はそれぞれのキャラクターを描くのがとてもうまく、男性も女性も色気を持っているので、つい推理そっちのけで引き込まれてしまう。

文章もわかりやすくまとまっており、とても読みやすいのも嬉しいところだ。

30.『わらの女』

 

主人公となるのは、34歳のドイツ人・ヒルデガルデ。

戦争ですべてを失い細々と生計を立てている彼女の夢は、玉の輿に乗ることだった。

そんなとき、新聞に求婚広告が掲載される。億万長者が結婚相手を募集していたのだ。

それに応募した彼女は……という形でストーリーが展開していくのだが、読み終わった後に「わらの女」というタイトルが秀逸であることに気づかされるだろう。

ヒデガルデはかなり打算的な女性で自業自得といえば自業自得であるが、読み進めていくうちにどんどん同情していくことになってしまう。

感情移入すればするほど、ラストは何とも言えない気持ちになってしまうのだ。

31.『ブラウン神父の童心』

 

ブラウン神父シリーズの第一短編集にて傑作。

12編収められているが、特に「折れた剣」「秘密の庭」「見えない男」「青い十字架」「奇妙な足音」あたりは必読中の必読。

事件の真相だけではなく、それぞれの風景や登場人物の心理描写もかなり細かく描かれている。

だからこそ、読み進めていくと明確に映像が浮かび、ひとつひとつのストーリーがおとぎ話のようにも感じられるのだ。

人の懺悔を聞く神父だからこその犯罪者の心理がわかるという設定もとても興味深い。

有名なトリックのネタ元にもなっている作品なので、ぜひ優先的に読んでおきたい1冊である。

32.『火刑法廷』

 

密室の王者ジョン・ディクスン・カーの代表作。

仮面舞踏会が開催された夜、マークの伯父であるマイルズが自宅で死んでいた。

病死と考えられていたものの、砒素を飲まされた疑いがあるということでマークの妻ルーシーに嫌疑がかかる。

その証言は奇怪なものだったため、今一度遺体を改めようとするとなんと遺体がなくなっていた!

その後、17世紀フランスで暗躍した女性毒殺者にそっくりなマリーにも毒殺の嫌疑がかかるが……。

本作では本格推理小説としての解決の後、エピローグとしてマリー中心の視点で怪奇小説が書かれている。どちらが正解かはわからないようになっており、1冊で2度楽しめる作品となっているのだ。

推理小説と怪奇小説の融合という表現がぴったりの作品である。

33.『皇帝のかぎ煙草入れ』

 

続いてもジョン・ディクスン・カーの代表作。

前の夫ネッド・アトウッドと離婚したイヴ・ニールは、向かいの家に住むトビー・ローズと婚約することとなる。

ある日の夜、ネッドがイヴの家の寝室に忍びこみ復縁を迫ってきた。その最中、イヴは向かいの家で殺されたトビーの父親と、茶色の手袋をはめた犯人らしき人物が部屋から出て行くところを目撃してしまう。

状況証拠からイヴに殺人の嫌疑がかかるが、前の夫ネッドのせいでアリバイが主張できず……という形でストーリーが展開していく。

「皇帝のかぎ煙草入れ」という作品では、本当にギリギリのミスディレクションが魅力になっている。大きな仕掛けがあるわけではないのに、ほとんどの読者が騙されてしまうテクニックには唸ってしまう。

女王クリスティに「このトリックには、さすがのわたしも脱帽する」と言わしめたトリックをぜひその目に。

34.『ボーン・コレクター』

 

リンカーン・ライムシリーズの第1作目。

『ボーン・コレクター』といえば映画のイメージが強い方も多いかもしれない。

不審な通報を受け、元モデルのアメリア・サックス巡査が調べていると男の生き埋め死体を発見する。

現場には奇妙な痕跡が残されており、かつて捜査中の事故で四肢麻痺となった敏腕科学捜査官リンカーン・ライムに助言を求め……という展開。

四肢麻痺となったリンカーン・ライムの抱える苦悩も描かれている一方で、いかにもアメリカらしいユーモラスな会話では思わず笑ってしまう。

展開が目まぐるしく変わっていくので、常にハラハラドキドキさせられるのも本作の魅力だ。

35.『推定無罪』

 

ラスティ・サビッチはやり手の地方検事補。

妻のバーバラというものがありながら、出世欲旺盛な女性検事キャロリンと関係を持ってしまう。

ある日、そのキャロリンが他殺体となって発見され、ラスティが逮捕されてしまった。

ラスティは今まで手を焼いてきたやり手の弁護士・サンディに弁護を依頼するが……という展開。

「推定無罪」は映画化されており、そのイメージが強い方も多いかもしれない。

不倫男の心理状態や妻との関係性といったものがとにかくリアルに描かれているのも特徴。アメリカの司法制度がよくわかる作品でもある。

そして何より、ラストには本当に衝撃の展開が待っているので楽しみにしていてほしい。

36.『シンデレラの罠』

 

昔、あるところに「ミ」「ド」「ラ」という3人の娘がいた。

名付け親のミドラ伯母さんは「ミ」ばかりを可愛がっており、「ラ」が死んで「ミ」は「ミシェル」と呼ばれるようになった。

「ミシェル」はお金持ちの伯母さんのところに引き取られ、残った「ド」は「ドムニカ」として普通の銀行員となった。

そして9月のある朝、「わたし」は目を覚ますが、なんと記憶喪失になっていた。

「わたし」は一体誰なのか。

読み終えた頃には、タイトルの『シンデレラの罠』が絶妙に効いていると感じられるだろう。

読み進めれば読み進めるほど混乱されせられる展開に、ページをめくる手が止まらなくなる。徹夜を覚悟しよう。

37.『五番目のコード』

 

スコットランドの地方都市で、帰宅途中の女教師が何者かに襲われる。

この事件を発端に、街では連続殺人が。

現場には棺のカードが残されており、新聞記者のビールドは事件への関与を疑われながらも犯人を追い始める。

最後まで読めば「なるほど!」と納得できるのだが、読み進めている間はちりばめられているヒントに全く気づくことができない。

読み返すと確かにきちんと伏線が張られており、それをしっかりと回収しているということに驚かされるのだ。

ぜひ二度読んでみてほしい。

38.『九マイルは遠すぎる』

 

表題作にして傑作『九マイルは遠すぎる』含む短編集。

簡単にいうと、「9マイルもの道を歩くのは容易じゃない。まして雨の中となるとなおさらだ」というたった一言から論理的な推理をおこなっていく作品である。

短編ミステリの定番中の定番なのでぜひ読んでおこう。

もちろん他の作品も面白いが、やはり『九マイルは遠すぎる』が頭一つ抜けている。

古典ミステリなので多少の古臭さは感じられるが、それもまたいい味になっているので、存分に雰囲気を噛みしめてほしい。

ミステリ好きならまず外すことのできない1冊なのだ。

39.『うまい犯罪、しゃれた殺人』

 

タイトルの通り、しゃれた話が多く、ミステリは初めてという方でもサクサク読み進めていくことができる短編集である。

どの話もウィットに富んでいて、結末としては主人公にとってちょっと皮肉な形でまとまる話が多い。

この短編集は結末やオチよりも、その過程を楽しむ作品といっていい。

どの話も読者の創造の斜め上をいくような展開で、ページをめくる手が止まらなくなってしまうだろう。

ストーリーはもちろん、何気ない言葉の選び方も魅力的。中身が濃いのにしっかりとコンパクトにまとめられた話ばかりなのが嬉しい。

40.『悲しみのイレーヌ』

 

パリ警視庁犯罪捜査部部長のカミーユ・ヴェルーヴェン警部は、40歳になってイレーヌという女性と結婚する。

イレーヌは妊娠しており、幸せの絶頂だったが、その最中、凄惨な殺人事件が起こる。

こんなのは見たことがないと部下がこぼすほどの殺人現場だったが、実はそれが小説を模倣していると気づき……という形でストーリーが展開していく。

グロテスクな表現が多く、ストーリーは重たい。それでも、海外ドラマを見ているような感覚でグイグイ読み進めていってしまう魅力がある。

本作に興味を持っている方であれば同著者の『その女アレックス』も気になるところだろうが、先に『悲しみのイレーヌ』を読むことを強くおすすめする。

41.『殺人交叉点』

 

十年前に起きた二重殺人は、単純な事件だったと誰もが疑わなかった。

ただ、その真犯人は実は別の人物で、時効寸前に驚愕の真相が……という形で物語は動き出す。

『殺人交叉点』は中編集となっており、タイトルとなっている作品の他にも『連鎖反応』という作品が収録されている。

表題作『殺人交叉点』は、サプライズ・エンディングの名作ともいわれているほどの作品。

読み終わった後にやはり「やられた!」と感じる方も多く、感想を述べようといてもネタバレになってしまうので言えない、ともどかしい思いをするのだ。

つまり、実際に読んでみるしかないということだ。

42.『クロイドン発12時30分』

 

クロイドン発パリ行きの旅客機がボーヴェ空港に着陸したとき、乗っていた富豪のアンドリューはすでに亡くなっていた。

ストーリーは過去に戻り、工場主であるチャールズ・スウィンバーンの殺人計画が綴られていく。

本作は【※倒叙三大名作】のひとつとなっていることもあり、読み応えが十分にある。

ストーリーの展開自体はかなりゆっくりであるが、その分、描写が細かいので読み進めながら具体的な情景が浮かびやすい。

殺害方法もアリバイもトリックも複雑ではなく、むしろシンプル。だからこそ読みやすく、渋めの皮肉がいいアクセントになっているのだ。

※倒叙とは、犯人の視点で進められていくミステリのこと。

43.『樽』

 

F.W.クロフツの最高傑作と名高い一作。

ロンドンに到着した船荷の樽の中から金貨と人の手が発見される。

荷役会社は慌てて警察を呼ぶが、警察が来る前にその樽が消えてしまう。

数日後、その樽は発見されるが、この樽をめぐってロンドン警視庁とパリ警視庁の刑事が共同捜査を開始しする……という展開。

本作では、地道な捜査がしっかりと丁寧に描かれているのが特徴的だ。地味な描写が続くとマンネリ化してしまうと思われがちだが、意外なほどに読みやすくスイスイと進んでいく。

鮎川哲也氏の名作『黒いトランク (創元推理文庫)』や、横溝正史氏の名作『蝶々殺人事件(角川文庫)』もこの『樽』を意識して書かれている。

それほどに日本の推理小説に影響を与えた作品なのだ。

 

44.『クリスマスのフロスト』

 

「フロスト警部シリーズ」の第一弾。

テレビドラマのほうでご存知の方も多いとは思うが、名物警部のフロストはかなりのお下品だ。

テレビではお下品度合があれでも抑えられていたのだが、小説のほうではフルスロットルの状態。

お下品で最低なジョークには何度も笑わされてしまうのだ。

仕事中毒のダメ人間なのだが、1本しっかりと芯が通っているフロスト警部のキャラクターにハマってしまう方はかなり多いだろう。

息つく暇もない展開なので、一度読み出すと他のシリーズまで一気に読んでしまうくらいの魅力がある。

45.『幽霊の2/3』

 

ヘレン・マクロイの傑作。

出版社社長の邸宅でパーティーが開かれた。

余興のゲーム『幽霊の2/3』の最中に、人気作家のエイモス・コットルが毒物を飲んで死んでしまう。

招待客のひとりであった精神科医のベイジル・ウィリングが関係者から事情を聞いて回ると、やがて恐るべき真実が……という展開。

パーティーというたくさんの人がいる中で正確に人を殺すことができるのか、という部分も重要だが、実はそのもっと先にさらなる謎があるのだ。

ストーリーの構図はもちろん、細かなところまでとにかく表現がうまい作品。

『幽霊の2/3』とは不思議なタイトルだが、読み終わった後ならそのタイトルにもうなずけるだろう。

46.『まるで天使のような』

 

マーガレット・ミラーの最高傑作。

カジノで持ち金をすってしまい、山中で交通手段をなくしてしまった青年クインは、とある新興宗教の施設に助けを求めた。

そこでひとりの修道女から「オゴーマン」という人物を探すように依頼される。

調べてみると、オゴーマンは平凡で善良な男だったが、5年前に謎の死を遂げていたことがわかり……。

本作はラストの数行でとてつもない衝撃が走ることで有名だ。

帯やあとがきを見てから小説を読むという方もいると思うが、この作品に関してはそういった情報を入れずに読んだほうが楽しめるだろう。

47.『ママは何でも知っている』

 

毎週金曜の夜、刑事のデイビットは妻と一緒にブロンクスのママのもとへと訪れる。

ディナーの席でママは捜査中の殺人事件の話を聞きたがるのだが、ママは簡単な質問をいくつかするだけで事件を簡単に解決してしまうのだ。

安楽椅子探偵ものの最高峰、といわれるだけあって、やはり充実した短編ばかりが揃っている。

ママがしてくる簡単な質問が読者へのヒントにもなっているのだが、読者はそのヒントをもってしてもわからないところが面白い。

ママの人柄もとても魅力的で、どこか温かい気持ちで謎解きを楽しむことができるのだ。

48.『長いお別れ』

 

ハードボイルド小説の傑作である。ハードボイルドとは何かを知りたいのであれば、この作品を読むのが手っ取り早いだろう。

1949年の秋、私立探偵フィリップ・マーロウはテリー・レノックスという酔っ払いと出会う。

ふたりは意気投合し、毎晩のようにバーを共にするようになり、レノックスはメキシコのティファナに連れて行ってほしいとマーロウに頼み込みこむ。

それを受け入れたマーロウだったが、実はレノックスは妻殺しの容疑がかかっていたのだった。

世界観はもちろん、文体やキャラクターまでとにかく魅力的。ラストは少し寂しさも感じるが、マーロウの矜持にしびれる読者が続出している。

49.『シャドー81』

 

ロサンゼルスからハワイに向かう747ジャンボ旅客機が乗っ取られた。

その犯人は最新鋭戦闘爆撃機のパイロットで、旅客機の死角に入り、姿を一切見せなかった。

犯人は巨額の金塊を要求し、地上の仲間と連携する。この前代未聞の手口に、FBIだけではなく軍や政府までもが犯人に翻弄されていく。

本作では荒唐無稽とも思えるハイジャックだが、綿密な計算や計画が行われており、実際に素人でもハイジャックができてしまうのではないかと思わせる不思議な魅力がある。

口コミやレビュー、さらには表紙なども極力見ないようにして、じっくりと読み込んでほしい作品だ。

50.『さむけ』

 

実直そうな青年アレックスは、新婚旅行の初日に新妻のドリーが失踪してしまい茫然自失の状態になってしまう。

私立探偵アーチャーは見るに見かねて、ドリーの調査をおこなう。

しかしドリーの居場所はつかめたものの、夫のところへは戻るつもりがないという。

そんな中、追い討ちをかけるように殺人事件が起こり、ドリーは錯乱状態に陥ってしまい……。

この『さむけ』という作品の中では、いくつかの殺人事件が起こる。登場人物も多く、人間関係も時系列もかなり入り組んでいる。

ただし、最後までしっかりと読んでいけば、タイトルの通り『さむけ』を感じられること間違いなしなのだ。

 

おわりに

以上が『海外ミステリ小説おすすめ名作・傑作50選』となる。

本当に面白いミステリばかりが揃っているのでぜひ参考に。

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