はじめて倉知淳(くらちじゅん)さんの『星降り山荘の殺人』を読んだ時、あまりの騙され具合に「なんなんだこの人は!」と衝撃を受けた。
それからひたすらに〈猫丸先輩シリーズ〉を読み漁り、すっかり猫丸先輩のファンになってしまった時のことは今でも覚えている。
今回は、倉知淳さんの「最低でもコレだけは読むべき」という超おすすめ作品を3作品ほど選ばせていただいた。
どれもミステリー小説がお好きであれば読んで損はない名作ばかり。「やられた!」「騙された!」という感覚がお好きならなおさらである。
いますぐ本屋さんにレッツゴーしよう。後悔はさせないぞい。
1.『日曜の夜は出たくない』
まずはこの『日曜の夜は出たくない』である(私は日曜に限らず外に出たくない)。
小柄で童顔、年齢不詳という謎に溢れる「猫丸先輩」を探偵役とした、〈猫丸先輩シリーズ〉の一作目となる短編集。
そして倉知淳さんのデビュー作でもある。
共通点は猫丸先輩の存在くらいで、ジャンルはかなりバラバラ。つまりこれ一冊で多彩なミステリを楽しめるということである。
各短編が単独でしっかり面白いのに加え、最後には見事な「仕掛け」に驚かされることとなるのだ。
ミステリはもちろん、この作品では猫丸先輩のキャラクターを存分に堪能していただきたい。
非常に個性が強くて「なんだこの先輩は?」ってなるのだが、気がつけばファンになってしまうのだ。
2.『過ぎ行く風はみどり色』
猫丸先輩シリーズの二作目にして傑作長編である。
この作品のために一作目の『日曜の夜は出たくない』を読むことをオススメしたのだ、と言ってもいいくらい読んでほしい。
密室状態の場所で殺人が起こる。これは悪霊の仕業だ!と主張する霊媒師が降霊会を行うが、その最中にも殺人が起きてしまう。
密室殺人に始まり、悪霊やら降霊会などジョン・ディクスン・カーを思わせる奇怪なキーワードが並ぶが、今作におどろおどろしい雰囲気などほぼない。
だってこれは猫丸先輩シリーズなのだから。怖いどころか温かみのある読後感が味わえてしまう。解決編の際の、猫丸先輩の配慮に涙してしまった。
物語への引き込み具合はバッチリ。質の高いトリックが並び、伏線の敷き方もお上手という完成度の高いミステリなのだ。
そして何より、メインディッシュとなる「あの仕掛け」は流石の一言である。
3.『星降り山荘の殺人』
ミステリー小説において「騙される」ことがお好きなら絶対読むべき作品である。
ちなみに猫丸先輩シリーズではなく、ノンシリーズもの。
大雪に閉ざされ、外との連絡も取れなきなった山荘が舞台(この時点でワクワク)。そこに集まった人々が殺人事件に巻き込まれる、という非常に本格らしいミステリである。
面白いのは、途中途中に著者からの「ヒント」が挿入されているところ。
『〇〇は事件の犯人ではない』『この章の〇〇は決して〇〇ではない。』みたいな。
なのに、騙されるのである。こんなにも注意書きがあるのに、だ。
なんてフェアなんだ。ありがとう!と感動していたらコレである。あまりにもひどい。
騙されるとわかっていても面白いくらいに騙される。あまりの騙され具合に笑ってしまうのだ。
よくよく読み返してみると、本当に見事な伏線だったことに気がつく。アッパレである。
おわりに
正直、倉知淳さんがどうこうというわけでなく、ミステリー小説がお好きであればこの3作品はぜひ読んでいただきたい。
数ある国内ミステリー小説の中でもトップクラスの面白さを誇るのだ。読まないなんて損である!
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