まずは新本格ミステリ30周年記念オメデトウ!
ということで、島田荘司さん、法月綸太郎さん、有栖川有栖さん、という巨匠達が生んだ名探偵の傑作短編集が3冊同時刊行した。
嬉しさの極みである。
もう一度言おう。
嬉しさの極みである。
そこで今回は、島田荘司さんの『名探偵傑作短篇集 御手洗潔篇』をご紹介させていただきたい。
島田荘司『名探偵傑作短篇集 御手洗潔篇』
ただでさえ面白い御手洗潔シリーズの短編の中から、さらに選りすぐりした5篇が収められた傑作短編集である。
収録されているのは、
1.『数字錠』
2.『ギリシャの犬』
3.『山高帽のイカロス』
4.『IgE』
5.『SIVAD SELIM』
の5篇。
まさに傑作揃いである!
早速あらすじを見ていこう⊂( ・∀・) 彡
1.『数字錠』
吹田電飾の社長が〈密室〉で殺されていた。
出入り口は二つあったが、道路に面したシャッターには鍵が、通用口のドアには『数字錠』がかかっており、数字錠の番号は社長だけが知っていた、という状況。
警察は犯人を2人にまで絞ったのだが、この〈数字錠の謎〉が解けずに御手洗に助けを求めに来た、というわけである。
記念すべき御手洗シリーズ初短篇
本作は『御手洗潔の挨拶』というに収録されていたものであり、御手洗潔が私立探偵を名乗った最初の作品でもある。
メインである数字錠のトリックには「ナンダッテー!」と叫んでしまうような真実が隠されている。
しかしそれ以上に、この短篇には「御手洗潔の優しさ」が溢れているのだ。これを読んで御手洗潔のファンになってしまう方も多いだろう。
とても心に残る短編であり、読んでいただければなぜこの短篇に人気があるかがすぐにわかっていただけるはずだ。
2.『ギリシャの犬』
お隣のお気に入りのタコ焼き屋がまるごと盗まれてしまい、しかも盲導犬まで殺害されてしまった、という女性。
盗まれたお店の跡には「不思議な記号が書かれた一枚の紙切れ」が落ちていたという。
そして依頼を受けた女性の家に向かうと、今度は女性のお子さんが誘拐されてしまっていた。
これも『御手洗潔の挨拶』のうちの一遍。
たこ焼き屋の消失に魅力的な暗号の謎、誘拐事件をめぐるサスペンスと、とても読み応えとワクワクが詰まった短篇になっている。
紙切れに記された暗号がわかった時は感激したものだ。
また、御手洗潔の〈犬好き〉がよく現れた短篇でもある。
3.『山高帽のイカロス』
人間は空を飛べると主張していた画家が、ビルとビルを繋いだ電線の上で死体となって発見された。
まさに空を飛ぶようにして死んでいたのである。
一方では、東武伊勢崎線の最終電車つけられロープの先に男性の右腕が絡みついている、という事件が発生していた。
全く関係のないように見える事件に、一体何の繋がりがあるのか。
大掛かりすぎるまさかの真実
『御手洗潔のダンス』に収められていた一遍であり、その中でも特に島田荘司さんらしい奇想天外なトリックが炸裂している。
思わず「そんなバカな!」と言いたくなるほど無茶苦茶であるが、これぞ御手洗潔シリーズである。
予想の斜め上をいく衝撃の真実をぜひ楽しんでいただきたい。
4.『IgE』
とある声楽家から、愛する女性が失踪したので探して欲しい、という相談を受ける御手洗。
次いで、レストランで働いている青年から「店の便器が三回連続で破壊された」という相談も受ける。
まったく関係のないように思える二つの事件に、御手洗潔は一つの繋がりを発見する。
「御手洗が真っ先に真相を見抜き、相棒の石岡君と読者が置き去りにされる」という御手洗シリーズではおなじみの展開が楽しい。
なぜこのような謎がいとも簡単に解けてしまうのか。
5.『SIVAD SELIM』
ひとりの高校生から、二十三日に行う身障者のためのコンサートに御手洗に来てほしい、とお願いされる石岡君。
御手洗は当然引き受けてくれるだろう、と思った石岡君だが、なんと「その日だけは絶対にダメだ」と御手洗に断られてしまう。
何度も交渉するもが「先に予約が入っている」と受け付けてくれない(なんか御手洗が冷たい奴みたいに描かれているけど、どう読んでも御手洗は悪くないよね)。
結局二人の間に険悪なムードが流れ、コンサート当日を迎えてしまう。
御手洗シリーズの中でも異質な一遍。
『御手洗潔のメロディ』に収録。
実はこの短編はミステリではなく、御手洗潔をもっと好きになるために書かれた短編、という感じである。
殺人どころか、「日常の謎」程度の謎さえ起きない。
無理やり謎を見つけるとしたら、御手洗のどうしても外せない用事とはなんなのか?という事くらいだろう。
しかしながら、この短編を収録しているところがまたニクい。ナイスチョイスだと思う。
御手洗シリーズ入門にもオススメできる傑作集!
個人的にはシリーズ一作目から順番に、①『占星術殺人事件』、②『斜め屋敷の犯罪』、③『異邦の騎士』、と順番に読むのがベストだと思うけど、長編は読みにくいなあ、という方はこの短編集をオススメしちゃうぞ。
この一冊で様々な「御手洗潔」を味わう事ができるだけでなく、他の御手洗潔シリーズも読んでみたい!と思わせる短編ばかりが揃っているからだ。
これを読めばほぼ間違いなく御手洗潔の魅力に取り憑かれ、他のシリーズ作品を一気に読み漁ることになるだろう。
まさに〈傑作短編集〉という名にふさわしく、御手洗シリーズを読んだ事がある方のない方も思いっきり楽しんでいただけものとなっている。
少しでもミステリー小説がお好きであるなら、この機会にぜひお手に取ってみてもらいたい。
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