初めて『粘膜人間』を読んだとき、飴村行さんは一体なぜこんなものを書いたのか?と疑問に思ったし、一体どのような人間がこの作品を喜んで読むのだろう、とも思った。
しかし読み終わった時の私は完全に「粘膜シリーズ」の虜になっており、狂おしいほどに飴村ワールドに魅了されていた。
おかしい。
飴村行さんの『粘膜シリーズ』とは、グロテスクであり、バイオレンスであり、一言でまとめるなら「異常性のフルコース」のような、グロホラー好きな人が達が愛してやまない、グロホラー好きのためのシリーズである。
何が恐ろしいって、この味を一度知ってしまうと他のグロホラー作品では物足りなくなってしまうことだ。
未読であればぜひ挑戦してみよう。ただし責任は取らない。
1.『粘膜人間』
全てはここから始まった。始まってしまった、と言った方が良いか。
身長195cm、体重105kgという小学生の弟・雷太(この設定からまずおかしい)。
そんな雷太の暴力に恐れる長兄と次兄は、ついに弟の殺害を計画する。しかしあの化け物じみた巨体には、二人だけでは全く歯が立たない。
そこで二人は、村のはずれに棲むという「ある者たち」に弟の殺害を依頼する。
はたして、雷太を無事に殺害することができるのか、それとも……。
まずはコレから
読み始めてからすぐに「普通のグロホラー作品とは違う」と感じていただけるだろう。ただただ、異常なのである。
グロテスクなのは間違いないのに、どこかユーモアがあって楽しく読めてしまうのだ。なんなのだろう、この感覚。
終始気持ち悪さに溢れているにもかかわらず、ストーリーが気になって途中でやめることができない。
最初からぶっ飛んでいるのはすぐにわかるが、最後まで読むとさらにぶっ飛んでいることがわかる。
まずはこの作品を読んで、面白いと思えたなら喜んで次巻を手に取ろう。
逆に今作を読んで「生理的にムリ」と思った場合、次巻を読んでも楽しめることはまずないと思うが、挑戦してみる価値はある。
とりあえず、グッチャネだ。
2.『粘膜蜥蜴』
この作品を手に取るということは、前巻『粘膜人間』を楽しめたということになるので、もう安心して読んでほしい。
相変わらず悪趣味に満ち溢れた、飴村ワールド全開の一作である。
戦時中の日本を舞台に、〈ヘルビノ〉という頭が蜥蜴(トカゲ)になっている爬虫人が存在する世界での物語。
前作『粘膜人間』と同じく異常性は極めて高いのであるが、それに加えエンターテイメント性も非常に備わった作品になっている。とにかく読んでいて楽しいのだ。
ただグロいだけの小説とはわけが違う。
全3章からなる構成なのだが、1章読むごとに伏線が重なり、面白みが増していき、最後に「おおお!」と唸ってしまう展開になっている。お見事と言うほかない。
ぜひ最後まで一気読みしてほしい。
3.『粘膜兄弟』
舞台は昭和初期。
とあるカフェで働く「ゆず子」という女性を好きになった双子の兄弟。
しかしゆず子は美人であり、愛嬌があり、誰からも人気のある女性だった。
当然ふられ続ける兄弟。
しかしある日、なんとゆず子の方から食事のお誘いがきたのだ!
兄弟は喜ぶ。
それが悲劇の始まりだとは知らずに。
とうとうこの世界観に慣れてしまったのか、前作に比べて異常性はやや薄いように感じる(それでも十分異常だが)。
ただし面白いことには変わりないので、安心して読んでほしい。
1作目『粘膜人間』と2作目『粘膜蜥蜴』はどちらから読んでもかまわないのだが、3作目『粘膜兄弟』を読むにあたっては前もって『粘膜人間』と『粘膜蜥蜴』を読んでいた方が楽しめる。
ので。
ぜひ一作目から順番に読むことをおすすめしたい。
4.『粘膜戦士』
シリーズ初の短編集。
これまでのシリーズ作品のスピンオフ的な物語が収められており、粘膜シリーズファンにはたまらないものとなっている。
完全にシリーズのファン向け、というか、それぞれのシリーズ作品のサブストーリーのようなものである。
しかし物足りなさはなく、相変わらずの「粘膜感」なので安心してほしい。
間違いなく前3作を先に読んでいた方が楽しめるので、くれぐれも最初に読まないように注意しよう。
あとがき
というわけで、
1作目『人間』2作目『蜥蜴』はどちらから読んでも大丈夫だけど、3作目『兄弟』と4作目『戦士』は順番に読んだほうがいい、ということなので
①『粘膜人間』
②『粘膜蜥蜴』
③『粘膜兄弟』
④『粘膜戦士』
と、シリーズ発行順に読むのが1番おすすめである。というか絶対なのだ。
参考にしていただければ嬉しい。
さあ、粘膜ワールドへ!
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