綾辻行人さんの『人間じゃない 綾辻行人未収録作品集』が発売された!
タイトルの通り、綾辻さんの単行本未収録作品が5編収められた作品集となっている。つまり綾辻さん好きにはたまらない作品ってわけだ。
早速ではあるが、収められている五作品がどんなものなのか、見てみるとしよう。
1.「赤いマント」
本書でも綾辻さんが述べている通り、非常に王道のミステリ短編である。
トイレに入っいると、どこからともなく「赤いマントかぶせましょか」と声が聞こえてきて、「はい」と答えると血が吹き出して死んでしまう。
そんな都市伝説を耳にした道沢希早子は、ある日の夜、塾の教え子である水島由紀と遭遇。
近くの公園のトイレに入りたいのだが、「赤いマント」が怖くて入れないから困っていると由紀は言う。
見捨てるわけにはいかないので、希早子はトイレの前で待っていてあげることにした。
すると、本当に「赤いマントかぶせましょか」という声が聞こえてきて、個室の中にいた由紀は真っ赤に染まって倒れていた……。
というミステリ。
この短編は〈館シリーズ〉の四作目『人形館の殺人』の後日譚に当たる物語となるため、『人形館の殺人』の登場人物である架場久茂と道沢希早子が登場する。
だが、人形館の物語との大きなつながりはなく、未読な方でも楽しんでいただけるようになっているのでご安心を。
2.「崩壊の前日」
『眼球綺譚 (角川文庫)』に収録されている「バースデー・プレゼント」の姉妹編となる物語。
あらすじを説明できないほど、幻想的かつ意味不明。この意味不明な感じが気持ち悪くて良いのだ。
3.「洗礼」
わたしも大好きな犯人当て作品集『どんどん橋、落ちた』の番外編となる中編。
大学生バンドのメンバーの一人が殺害される事件を解くわけだが、「ダイイングメッセージ」や「読者への挑戦」などが含まれる王道なミステリとなっている。
もし未読であれば、『どんどん橋、落ちた』の方もぜひオススメしたい。
4.「蒼白い女」
『人間じゃない』に収録されている五作品の中で一番短い短編。ショートホラー。
『深泥丘奇談・続々』収録の「減らない謎」の前に位置するエピソードとのこと。短いぶんキレがいい。
5.「人間じゃない――B〇四号室の患者――」
表題作だけあって一番好き。精神病棟を舞台にした短編集『フリークス』の番外編である。
「星月荘」という別荘にやってきた四人のうち、一人が「この中に、人間じゃないものがいる」と怯え始めた。
そしてその後、その人物は「完全な密室」となった部屋で「ありえない状態」で発見される。
彼女のーー肉体はまさしく、何か異常な、人ならぬものの怪力によって破壊されたようにしか見えなかった。どう考えても、事故死は自殺ではない、ありえない。
185ページより
一言で言えばグッチャグチャ☆。
ホラーかミステリか。狂ったような世界観が最高に好みである。
『フリークス』が好みな方にはぜひ読んでいただきたい作品であった。
綾辻行人さん好きなら大満足の一冊
というわけで収められている短編は、どれも過去の作品とリンクしているものばかり。
元の作品を読んでいる方にとっては非常に嬉しいものとなっている。特に表題作「人間じゃない――B〇四号室の患者――」は最高だった。
もし未読であれば、この機会に元の作品も読んでいただくと良いだろう。
『人形館の殺人』(館シリーズは全部オススメだよ)。
『眼球綺譚 (角川文庫)』。
『どんどん橋、落ちた』。
『深泥丘奇談・続々』。
『フリークス』。
どれも読んで損はない面白さを誇るのだから。
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