西澤保彦さんの描くミステリー小説は少し独特で、「タイムリープ」や「人格の入れ替わり」、「テレポーテーション」などSF要素を取り入れているのが特徴的だ。
また代表作である匠千暁シリーズ(タック&タカチシリーズ)といった、キャラクター重視の本格ミステリもまた魅力的である。
今回は、そんなミステリ小説を読む上では欠かせない「西澤保彦さんのおすすめミステリ小説」を7作品ご紹介したい。
読んで損はないものばかり、というより読まないと損な作品ばかりなのでぜひ参考に。
目次
1.『彼女が死んだ夜』
西澤保彦さんを代表する【匠千暁シリーズ(タック&タカチシリーズ)】の一作目。
アメリカ旅行の前夜、浜口美緒が帰宅すると部屋に知らない女の死体があった。
そこから、匠 千暁(たくみ ちあき)、高瀬 千帆(たかせ ちほ)、辺見 祐輔(へんみ ゆうすけ)、羽迫 由起子(はさこ ゆきこ)、の四人が中心となり事件を解決していく。
一つのミステリー小説としてのクオリティはもちろん、この四人の青春小説としても楽しめるのが匠千暁シリーズ最大の魅力だ。
とにかくこの四人のキャラクターがよく、あーだこーだと皆で推理合戦をするのが羨ましく思えてしまう。
読む順番
さてシリーズの読む順番であるが、
1.『彼女が死んだ夜 (幻冬舎文庫)』長編
2.『麦酒の家の冒険 (講談社文庫)』長編
3.『仔羊たちの聖夜(イヴ) (幻冬舎文庫)』長編
4.『スコッチ・ゲーム』長編
5.『依存 (幻冬舎文庫)』長編
☆『解体諸因 (講談社文庫)』短編集
☆『謎亭論処―匠千暁の事件簿』短編集
☆『黒の貴婦人 (幻冬舎文庫)』短編集
6.長編『身代わり (幻冬舎文庫)』長編
7.長編『悪魔を憐れむ』長編
となる。
必ず順番に読もう。
2.『七回死んだ男』
これも西澤保彦さんの代表作である。
SF小説でおなじみの「タイムリープ」の設定を取り入れた新感覚ミステリー小説で、二転三転する展開、どんでん返し、と読者を楽しませる要素が満載だ。
ミステリー小説がお好きであれば必ず読んでおこう。
3.『神のロジック 人間(ひと)のマジック』
人里離れた奇妙な学校に集められた6人の生徒。
彼らはなぜここに集められたのか。
そして謎の犯人当てクイズが始まり、「学校」には新入生が入ってきて、本物の殺人事件が発生して……。
という不思議な世界観が楽しいミステリー小説だ。
あるトリックが使われたおり、騙されるのが大好きな人にはたまらない作品となっている。
4.『人格転移の殺人』
ファーストフード店にいた6人は突如大地震に襲われる。
出入口が潰れ脱出ができなくなり、彼らは地下へと通じる封鎖されていたドアを破って逃げ込んだ。
そして起こったのは、【人格の交換】である。
という、6人の男女の間で不定期に人格の交換が起こる、という超常的な現象の中で発生した殺人事件を扱う面白い試みの作品だ。
ただ設定が面白いだけでなく、西澤保彦氏の最高傑作とも呼ばれる質の高い作品でもあるのでぜひ読んでおこう。
5.『念力密室!―神麻嗣子の超能力事件簿』
基本的に密室モノというのは「どうやって密室を作ったのか?(ハウダニット)」に焦点を当てられることが多い。
が、この作品では「どうやって密室を作ったのか?」ではなく「なぜ密室を作ったのか?(ホワイダニット)」に特化した短編ばたりが収められているのだ。
何故ならば本作では密室が超能力で作られるからだ。
とてもユニークな設定であるが、ミステリ小説の質は素晴らしく高く、思わず声をあげてしまう真相ばかりである。

6.『瞬間移動死体』
タイトルから想像がつく通り、「テレポーテーション」を使用した西澤さんらしい作品である。
怠け者でテレポーテーションを使える主人公が、妻を殺害するためにその能力を使って完全犯罪を試みるのだが、事態は思わぬ展開に。
犯人がテレポーテーションを使えるなんて普通なら反則だが、西澤保彦の手にかかればとても面白いミステリになってしまう。
また、とてもユーモアに溢れる犯人と内容となので、肩の力を抜いて気楽に楽しめるのも嬉しいポイントだ。
7.『聯愁殺』
1つの未解決事件に対し複数のミステリマニアが推理するといった、【多重解決】をメインとした作品。
内容のほぼ8割方を推理合戦が占めており、もうお腹いっぱいだよ、と思わせておいてあのラストである。
オチを楽しむためだけでも読む価値のある小説だ。
あとがき
一から匠千暁シリーズ(タック&タカチシリーズ)を読むのは大変だと思うが、このシリーズは絶対に読むべきだ。
ただしもし、1作目『彼女が死んだ夜』と2作目『麦酒の家の冒険』を読んで面白いと思わなければ、無理に全部読む必要はない。
それだけ『彼女が死んだ夜』と『麦酒の家の冒険』に匠千暁シリーズの魅力が詰まっているからだ。
この2作品を楽しめなければ、3作目以降の作品も楽しめないだろう。
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