さて、この法月綸太郎シリーズも、ミステリを読む上で欠かせないシリーズである。
今回はおすすめというか「必読」レベルの法月綸太郎シリーズを7作品に厳選した。
長編4作品、短編集3作品となる。
シリーズを読む上で順番はあまり関係ないので、気になった作品からさっさと手に取ることをおすすめする。
目次
1.『頼子のために』
法月綸太郎シリーズの長編最高傑作。
愛娘を殺された父親は、警察を信用できないので自ら真犯人を見つけ出し復讐をする、という内容の手記を残していた。
そこに法月綸太郎が登場し、この手記に基づきながら事件の驚くべき真相が明らかにしていく、という展開。
このなんでもない「手記」一つから法月が事件を紐解いていくわけですが、真相が明らかになったときは鳥肌モノ。思わずそういうことか!と絶叫してしまうほどに。
とても完成度の高い作品であるが、後味はかなり苦い。覚悟して読もう。
2.『一の悲劇』
誘拐モノの傑作。
原りょうさんの『私の殺した少女』に影響を受けて書かれており、サスペンス要素が強め。でも本格ミステリ。
この作品もどんでん返しが強く、思わず声を失ってしまう出来。
肝心のトリックも矛盾なくまとまっており、上手いこと読者の盲点を突いている。
読み終わると、なるほど、たしかにこれは『一の悲劇』だと納得できるのだ。
3.『雪密室』
名探偵・法月倫太郎のデビュー作。
タイトル通り、雪の密室を扱った王道の本格ミステリである。
良い意味でどストレートの本格モノで、トリックもシンプル。分かればなんということもないが、伏線がうまいので見事にやられてしまう。
推理小説の基本形、教科書のような、読んでいて安心感がある内容になっている。
派手さはないものの「読者への挑戦状」もついており、本格推理小説としての完成度は高い。
ミステリを読み慣れた方には新鮮味があまり感じられないと思うが、一度は読んでおくべき作品だと強く思う。
4.『誰彼』
謎の人物から死の予告状を届けられた教祖が、その予告通りに地上80メートルにある密室から消えた! そして4時間後には、二重生活を営んでいた教祖のマンションで首なし死体が見つかる。
宗教の教祖が密閉された塔から消失。その後離れたマンションから首無し死体が発見された。という謎がまず魅力的。
タイトルどおり、彼は誰なのか?という推理が転々とし、試行錯誤を繰り返す。
その試行錯誤だけでストーリーがグイグイ進む展開に唸る。
綸太郎の推理がことごとく否定され二転三転する展開が面白く、読んでいて気持ちが良い作品だ。法月一人で多重解決してるようなものである。
5.『法月綸太郎の冒険』収録「死刑囚パズル」「カニバリズム小論」
法月綸太郎シリーズの短編で一番の傑作をあげるなら、この『死刑囚パズル』だろう。
死刑が確定し、今まさに死刑執行される直前の死刑囚が毒殺された。
一体なぜ、死刑になる寸前の死刑囚をわざわざ殺害したのか?というホワイダニットがメインとなる謎。
それだけでなく、殺すのが決まっているならなぜ1ヶ月前でも1週間前でもなく、今日だったのかという謎も浮かび上がってくる。
この謎に対しての法月綸太郎の推理は神がかっている。見ていて笑ってしまうほどに。
そのほか、犯人は「なぜ死体を食べたのか」という謎のみに特化した短編『カニバリズム小論』もかなりオススメ。
6.『法月綸太郎の新冒険』収録「身投げ女のブルース」
警視庁捜査一課の葛城警部が車で移動中に、ビルから身投げしようとしている女性に遭遇する。
見逃す事ができないと判断した葛城は、女性を説得し無事救助する。
しかし、この事件には続きがあり、現場近くのマンションで占い師の小島忠司が殺されていたのだ。
この事件に、自殺しようとしていた女性が関わってくるようだが……。
とにかく後半のひっくり返しが最高。どんでん返しが鮮やかで、キレもいい。
ただアンフェアすれすれなので賛否あるようだが、細かいことは気にせず素直に驚きたければ読むべし。
7.『法月綸太郎の功績』収録「都市伝説パズル」
第55回日本推理作家協会賞受賞作。
有名な都市伝説になぞらえて一人の大学生が殺害された。
現場の壁には『電気をつけなくて命拾いしたな』という血文字が書かれていた。
容疑者は、事件の寸前まで一緒に部屋で飲み会をしていたサークルメンバー6人の中の誰か。
犯人はなぜ、わざわざ『電気をつけなくて命拾いしたな』と書き残したのか、がキーポイントとなる。
シンプルにロジックに特化した物語であり、短編との相性がよくキレがいい。
都市伝説とトリックの絡め方も上手く、論理的に真相へと導く鮮やかさがたまらない。
この一遍を読むだけでも『法月綸太郎の功績』を購入する価値あり。
そのほか、『イコールYの悲劇』『縊心伝心』など高品質な短編が収められている。
あとがき
というわけで、法月綸太郎シリーズのおすすめミステリー小説7選であった。
ぜひ参考にしてほしい。
もしこの7作品を読み終わったなら、
同じ法月綸太郎シリーズの
・『二の悲劇』
・『生首に聞いてみろ』
・『キングを探せ』
なんかも読んでみることをおすすめする。
なお、法月綸太郎シリーズの傑作短篇を寄せ集めた『名探偵傑作短篇集 法月綸太郎篇』という短編集があるが、これを読むんだったら今回紹介した短編集3作品をそれぞれ読んだ方が良い。
コメントを残す