【SF小説おすすめ50選】死ぬまでに読んでおきたい名作・傑作集

死ぬまでに読んでおきたいおすすめSF小説の名作・傑作を厳選した。

死ぬまでに読んでおきたいなんて大げさな、とお思いかもしれないが、本当にそう思っちゃっているから大変だ。

「とにかく面白いSF小説が読みたい」

「これだけは読んでおけっていうSF小説を知りたい」

「SF小説の古典を読んでみたい」

そんな方にとっての最高の記事となっている。

読んで後悔はさせない。

ぜひ参考にしてほしい。

 

目次

1.『銀河ヒッチハイク・ガイド』

 

ある日、地球に宇宙船団がやってくる。

何でも、銀河ハイウェイ建設工事の立ち退き期限が過ぎたので工事を開始するとのことで、地球を破壊してしまう。

数少ない生き残りである地球人アーサーは、仲間たちと宇宙を放浪することに……。

基本的に『銀河ヒッチハイク・ガイド』は小さなエピソードの集合体である。

最初に伏線をこれでもかとばらまいておいて、しっかりとその伏線を回収していく作風で、ふんだんに使われているジョークも嫌味がなくて面白い。

綿密に組み立てられた作品ではなく、どちらかというとめちゃくちゃな構成なのにきちんと繋がっているところにも面白味があるのだ。

2.『老人と宇宙』

 

本書の世界では、人類はすでに宇宙へと進出している。

ただし、宇宙に進出できるのは発展途上国の人だけで、先進国の人が宇宙に行きたい場合には宇宙軍に参入するしかない。

それも若いうちからではなく、75歳になってからでないといけないのだ。

主人公となるのはジョン・ペリー。宇宙軍に入り、クローンボディに意識だけを転送されることになる。

そこで宇宙人と戦ったり、軍の仲間とやり取りしたりしていく。ラブストーリーのような展開もありつつ、自分とは何なのかという哲学的な部分も垣間見れる作品だ。

「なぜ?」と思うことがあっても、最終的にしっかりと納得させてくれる気持ちのよい物語である。

3.『幼年期の終わり』

 

アメリカとソ連の宇宙開発競争が激しさを増していた20世紀後半、突如として巨大な円盤状の宇宙船が世界各国の首都上空に飛来する。

宇宙船に乗っている宇宙人の代表は、カレルレンと名乗り、今後地球が宇宙人の管理下に置かれることを宣言した。

ラストが衝撃的かつ美しいので、最後まで読み進めてほしい作品だ。

通常、宇宙人の管理下というと支配されて不当な扱いを受けて……といった想像をしてしまいがちだが、むしろ宇宙人の管理下に置かれたことによって平和になっていく。

長い時間をかけて観察されることになるだが、ハッピーエンドになるかどうかは実際に読んで確かめてほしい。

人間のちっぽけさを思い知らされる作品である。

4.『宇宙のランデヴー』

 

西暦2130年。宇宙監視計画スペースガードが謎の物体を発見する。

謎の物体はラーマと名付けられ、最初は小惑星だと思われていたのだが、宇宙探査機によって円筒型の人工の建造物であることが判明する。

急遽、艦長ノートン中佐率いる宇宙船エンデヴァー号がラーマの探査へと派遣されることになるが、そこには……。

この作品では生物ともロボットともつかない「バイオット」との遭遇なども描かれており、いわゆる宇宙人との遭遇はない。

ただ、未知の文明との遭遇がリアルに描かれており、主人公が感じる戸惑いや驚きを同じように感じることができる感慨深い作品である。

5.『たんぽぽ娘』

 

表題作『たんぽぽ娘』含む作品集。

その『たんぽぽ娘』では、「おとといは兎を見たわ、きのうは鹿、今日はあなた」というセリフが有名だ。

いわゆるタイムリープやタイムトラベルものなのだが、昔に書かれたものとは思えないくらい違和感なく楽しめる。

他の短編もノスタルジックで、ロマンティックなものが多い。気恥ずかしくなるような表現もあるが、感情が丁寧に描かれておりとても引き込まれる作品だ。

SFではあるものの、一般的に抱かれるSFよりもファンタジーの要素が強く、SFを読み慣れていないという初心者の方にもおすすめである。

6.『オルタード・カーボン』

 

舞台となるのは、27世紀の世界。

日本人と東欧人の血を引くタケシ・コヴァッチが主人公となる。

27世紀には、絶滅した高度な火星文明の遺跡を利用して、人類はいくつかの惑星に植民していた。社会はディストピアとして描かれており、ドラッグや肉体改造技術など殺伐としている。

さて物語は、主人公のタケシが依頼人から「自分を殺した奴を見つけてほしい」と頼まれるところから動き始める。

肉体と精神が別々だからこそ感じられるもどかしさなどもこの作品の魅力になっている。ドラマ化もされているが、原作ではドラマと違った展開なので原作は必読である。

7.『ハローサマー、グッドバイ』

 

長らく絶版になっていたが、熱烈な支持によって再販された人気の高い作品。

SFではあるものの青春ラブストーリーの要素もあり、それに加えて戦争や階級差、親子関係などいろいろな要素を盛り込んだ作品になっている。

多くの伏線がちりばめられており、ラストに向かってその伏線が綺麗に回収されていく様は快感。

序盤はぎこちない恋愛に微笑ましさすら感じられるが、そこから怒涛の展開が待っており読む物を震え上がらせた。

人によって受け取り方が異なってくるの結末もこの作品の魅力。ハッピーエンドなのかビターエンドなのか、どう受け取るかはあなた次第である。

8.『渚にて』

 

第三次世界大戦が勃発し、核爆弾のコバルト爆弾によって高放射線曝露で北半球は壊滅。

深海に潜っていたアメリカ海軍のスキップジャック級原子力潜水艦スコーピオン号は生き残り、南半球のオーストラリアのメルボルンへ寄港する。

そこでは戦争の被害を受けず比較的穏やかな生活が送られていたが、放射線による汚染の脅威は確実に忍び寄っていた。

『渚にて』は未来の話であるが、今の時代に読むと、本当に「明日は我が身」だということを痛感する。

安楽死についても描かれており、本当に考えさせられるテーマなのだ。どう死を迎えるか、考えるきっかけになるだろう。

9.『地球の長い午後』

 

壮大な世界観の中に、現代への皮肉が込められているとも言える作品。

舞台となっているのは未来の地球。そこでは、寿命が尽きかけた太陽が膨張していた。

地球の自転は止まり、永遠の昼と夜が地上にもたらされることになる。

そして昼の世界は熱帯と化し、その世界を我が物顔で生きているのは人間ではなく植物たちだった。

文明を失った人間は、弱肉強食の世界で隠れて細々と生きていくことに……。

世界観はもちろん、その中で生き抜く主人公・グレンの波乱万丈な旅にも引き込まれてしまう。

人によって想像図が異なり、そういったところも含めて楽しめる作品である。

10.『鋼鉄都市』

 

アイザック・アシモフのSF推理小説である。

地球人が「スペーサー」と呼ばれる宇宙人に支配されているところからストーリーが展開していく。

鋼鉄でできたドーム都市の中で80億人がひしめき合う地球では、とある事件が起こる。

スペーサーの科学者が何者かによって殺害されてしまったのだ。

そこで、ニューヨーク市警の刑事であるイライジャ・ベイリはこの事件の捜査を命じられる。

地球の運命が左右されるかもしれない重大事件で、スペーサーは捜査にあたってR・ダニール・オリヴォーという人間そっくりのロボットを加えることを提示していく。

ミステリー小説さながらの展開で、最後の謎解きは爽快感がある。それでいて、希望が持てるラストなのもポイントだろう。

11.『われはロボット』

 

「人間への安全性」「命令への服従」「自己防衛」というロボット工学三原則がある。

しかし、この三原則に反するような行為をおこなうロボットが出てきて事件となる。

その謎をスーザンたちが解明していくというミステリー仕立ての短編集になっている。

三原則に縛られてしまうがゆえに、完璧なはずのロボットがおかしなことになってしまうというシニカルな部分もある作品だ。

短編集ということで、思った以上にサクサクと読み進めやすいのも嬉しいところ。

テーマが一貫してブレないので、そういった部分でも読みやすい。

SF初心者の方やロボットに苦手意識を持っている方でも大いに楽しめるだろう。

12.『夏への扉』

 

1970年のロサンゼルス。

人工冬眠が実用化されており、未来への片道旅行が流行っていた。

機械技師の主人公・ダンは、ピートという愛猫を買っている。このピートこそ、物語の重要な役どころなのでぜひ注目を。

ピートは冬になると家中の扉を開けるようせがむのだが、それは扉のどれかが明るく楽しい夏へと通じていると信じているからだった。

親友の裏切りですべてを失ってしまったダンが、タイムマシンで自らの人生を取り戻していく展開はとても爽快感を味わうことができる。

ラストに向けての怒涛の展開は、さらに読んでいて気持ちがいい。

この作品を読んで猫を飼いたくなった人が続出した、とかしてないとか。

13.『月は無慈悲な夜の女王』

 

ロバート・A・ハインラインといえば、どうしても『夏への扉』が有名なのであるが、この作品も絶対に忘れてはいけない。

地球の植民地となっている月、そしてそこで暮らす人々が起こす革命についての物語である。

主人公はコンピュータ技師のマニー。物語はマニーが過去を振り返る形で進んでいく。

知性を持ったコンピュータであるマイクや、独立運動家のワイオなどを個性豊かな面々が登場する中、舞台が宇宙というだけでとてもリアルな革命が描かれている。

いわゆるAIであるマイクもとても愛嬌があり、ハッピーエンドとは言い難いラストの展開にはもの悲しさを感じる方も多いだろう。特に、ラストの一行に胸を打たれる人も多い。

古い作品でありながら、未来を予知しているかのような描写にもドキドキさせられるのだ。

14.『虎よ、虎よ!』

 

復讐の物語である。

24世紀の未来。

この頃、人類には一種のテレポーテーションの能力が備わっていることが判明していた。

この能力の発見は人々の生活を大きく変えるだけではなく、戦争をも引き起こしてしまうことになった。

25世紀になってもその戦争は続いており、その中で宇宙船「ノーマッド」の唯一の生存者であるガリヴァー・フォイルは救助を待ち、孤独な日々に耐えていた。

そこに「ヴォーガ」という輸送艇が通過するのだが、救助信号を無視し、飛び去ってしまう。

それをきっかけに、絶望したフォイルの復讐劇が始まる。

15.『星を継ぐもの』

 

数多くあるSF小説の中でもずば抜けた人気を誇る作品である。

物語は、月面で宇宙服を着た人間の遺骸が発見されるところから始まる。

この遺骸はチャーリーと名付けられるのだが、各国の組織に紹介しても該当する行方不明者はいなかった。

それどころかチャーリーは、5万年前に死亡したという結果が出たのだった。チャーリーの正体を探るために、さまざまな技術が駆使され、仮説が立てられるものの、その仮説を覆すような事実が出てこない。

しかし最終的には、この小説のタイトル「星を継ぐもの」の意味がビシっとわかるようになっており、最後まで読むと今までに味わったことのない爽快感を味わうことができるのだ。

SF小説としてもミステリーとしても楽しめる、長年語り継がれるのも納得の傑作である。

16.『ガニメデの優しい巨人』

 

上にご紹介した『星を継ぐもの』の続編である。

木星の衛星ガニメデで、2500万年以上前の宇宙船が発見される。宇宙船の中には、身長8フィートもの巨人の遺体があった。

その調査中、深宇宙から別の宇宙船が近付いてくる。近づいてきた宇宙船は、遥か昔に太陽系を去った巨人たちのものだった。

宇宙船に乗っていたのは巨人「ガニメアン」であり、つまりは宇宙人とのファーストコンタクトを経験することになる。

タイトルに『優しい巨人』とある通り、巨人たちはとても優しい存在であり、我々が想像する地球外生命体との遭遇のようなおどろおどろしさは一切感じさせない。

いろいろと考えさせられながらも、宇宙人との遭遇を和やかに見守れる作品である。

17.『人間以上』

 

異質な力を持っているがゆえに虐げられてきた子どもたちがグループを作り、集団人としてひとつの生命体になるという話。まずこの設定に圧倒される。

未熟で孤独だった集団人が種の繁栄のために、ひとつひとつを学んでいく姿にはいじらしさすら感じてしまう。

『人間以上』という作品は最初は詩的な表現が多く、わからない部分もたくさん出てくるだろう。

ただ、わからないからこそわかりたくてページをめくりたくなるという部分もあり、それがこの作品の大きな魅力でもある。

わからない部分があっても読み進めていくことによって唐突にわかるようになる部分もあり、そういったところも楽しんでいただきたい。

18.『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』

 

映画「ブレードランナー」の原作。

フィリップ・K・ディックといえば、まずこの作品を思い浮かぶ方も多いだろう。

主人公となるのは、リック・デッカード。サン・フランシスコ警察署に所属しており、逃亡したアンドロイドを処理する賞金稼ぎである。

ある日、火星から脱走したアンドロイドが地球に侵入し、その処分を命じられることになる。

このアンドロイドとのやり取りの中で、リックは自分の意義がわからなくなっていく。その葛藤がとてもリアルに描かれているのだ。

テーマ自体はよくある話なのだが、描写がリアルでありスリルにも満ち溢れている。

何を持って人とするのか。アンドロイドとは何なのか。そういった部分を考えさせられる深い作品である。

19.『トータル・リコール』

 

続いてもフィリップ・K・ディック。短編集である。

映画化もされている『トータル・リコール』や『マイノリティ・リポート』をはじめ、全体的に核戦争や異端者による策略といったものがテーマになっているものが多い。

過去に映画を見たという方でも結末が違っていたりするので安心して楽しんでいただきたい。

SFというととっつきにくいイメージを持たれがちだが、この短編集は特に読みやすい仕上がりになっている。

単なるSFではなくホラー的な要素のある話もあり、いろんな感情を楽しめる贅沢な一冊だ。どれも嫌味ではない程度の皮肉が効いていて、それがいい味を出している。

20.『一九八四年』

 

舞台となっているのは、タイトルの通り1984年。

核戦争を経て、オセアニア、ユーラシア、イースタシアの3つの大国によって分割統治されている世界である。

戦争が絶えず繰り返されている中、オセアニアでは思想や言語、結婚などありとあらゆる市民生活に統制が加えられていた。

完全な監視社会の中で、ロンドンに住む主人公のウィンストン・スミスはそういった体制に疑問を抱きながら、禁止行為に手を染めていた……。

古い作品ではあるが、恐ろしいほどに現代に通ずるものがある作品なのだ。

拷問シーンなどもあるため、目をそむけたくなるかもしれないが、今だからこそ読むべき作品と言える。

21.『たったひとつの冴えたやりかた』

 

表題作を含めた短編集である。

表題作の短編に関しては、「読み終わる前にハンカチが必要なかったらあなたは人間ではない」とまで言わしめるほどの作品である。

16歳の少女・コーティーが、タイトルの通り「たったひとつの冴えたやりかた」で話を締めくくるのですが、この選択が泣ける。まあ泣ける。

確かに状況的にそうするしかないのだが、そうせざるを得なかったコーティーのことを考えるとこみ上げてくるものがある。

他の『グッドナイト、スイートハーツ』『衝突』においても、どのような選択をするのかがキーポイントになってくるのでぜひ注目して読んでみよう。

22.『タイタンの妖女』

 

ベテルギウスまで延びる超空間に入りこみ、未来を明確に予知できるようになったニューイングランド出身のウィンストン・ナイルス・ラムフォードが、カリフォルニア州ハリウッド生まれの主人公マラカイ・コンスタントを引きずりまわすといった内容である。

説明するのが難しいので、さっさと読んだ方が早い。

火星や水星、地球、タイタンへと旅をさせて、劇的な展開が多いのだが、どれもこれも結局は宇宙船のパーツを届けさせるための展開。

宇宙を舞台にした壮大な神話のような不思議な話である。

タイトルから妖艶な女性が出てくるものと思う方も多いのだが、残念ながらそれらしい人物は出てこない。

23.『猫のゆりかご』

 

語り手となるのは、ジョーナという人物。ノンフィクション作家で、原子爆弾が日本に投下された日についての本を執筆するために取材をおこなっている。

その中でアイス・ナインというあらゆる液体を固体化する物質についての話を耳にする。

実在しないと言われていたのだが、実はアイス・ナインが実在し……という形で物語が進んでいく。

その間には、ジョーナが美しい女性モナに一目惚れをしたり、その養父であるパパ・モンザーノがアイス・ナインを飲んで自殺してしまったりと様々な展開が待ち受けているが、基本的にはユーモアを交えて語られており堅苦しさはない。

何気ない一言にハッとさせられる場面も多くあり、月日が経てどいつまでも心に残る作品である。

24.『所有せざる人々』

 

本作ではふたつの惑星が登場する。

「ウラス」は豊かな自然と物資に溢れているものの、それを享受できるのは富める者のみ。いわゆる激しい格差社会となっている。

一方、「アナレス」は乏しい資源と過酷な環境下にあっても一切の所有が許されない平等社会となっていた。

そこで、アナレス出身の物理学者・シェヴェックが世界を変えるような物理理論を抱き、ウラスに出発するという物語である。

シェヴェックがアナレスにいた頃とウラスに到着してからの話が交互に進んでいくのだが、タイトルの通り「所有すること」や「所有欲」について深く考えさせられる。

細かな描写があまりにリアルなため、現実に落とし込んで考えてしまう方も多い。

25.『闇の左手』

 

宇宙連合エクーメンは、かつての植民地であった惑星「冬」との外交関係の復活を目指し、使節を送り込んだ。

使節であるゲンリー・アイは、惑星「冬」での文化の違いに驚く。というのも、惑星「冬」の住民は両性具有だったのだ。

ゲンリー・アイは惑星「冬」のカルハイド王国の王との謁見を求めていたのだが、頼りにしていた宰相のエストラーベンが追放されてしまう。

SFなのですが、雪山登山のような描写もあり、ゲンリー・アイとエストラーベンとの間の友情や愛情も丁寧に描かれている。

ひたすらに、寒い物語だ。

26.『ハイペリオン』

 

聖遷と呼ばれた人類の地球脱出後から約800年が経過した28世紀。

この頃には、人類はテラフォーミング技術によってさまざまな惑星に進出・移住しており、連邦制の統一政体を築いていた。

テクノコアという新たな知性体群として活動するAIによって、未来の予測が可能になっていたが、そのテクノコアにも予測できない惑星があったた。

それが「ハイペリオン」である。

そのハイペリオンにある時間の墓標に異変が起こっており、その謎を解明するために7人の男女が巡礼として送り出されるのだが……。

それぞれの因縁が語られる形でストーリーが進み、読み進めることによってつながっていく感覚が非常に楽しい。これぞ小説のの醍醐味である。

27.『エンダーのゲーム』

 

とある未来。人類は異星人バガーによる二度の太陽系への侵攻を退けていた。

三度目の侵略に備えるため、地球の衛星軌道上にバトル・スクールと呼ばれる施設を設置し、そこで異星人バガーによる侵略に対抗する人材を養成することとなる。

地球では一家族2人までしか子どもをもうけられなくなっていたのだが、ウィッギン家では2人の子どもが優秀ということで3人目の出産が許された。

その3人目こそ、エンダーだった。

天才的な才能を持っていたエンダーは司令官の最有力候補として6歳でバトル・スクールに編入させられる、が。

天才少年の成長物語でありながら、意表を突かれる展開の連続で一度読みだすと止まらなくなる作品である。

28.『死者の代弁者』

 

『エンダーのゲーム』の続編。エンダーのゲームを読んでいることを前提で話が進んでいくので、先に『エンダーのゲーム』を読んでおこう。

かつて侵略してきた異星人バガーに次ぐピギーという知的生物が発見される。かつての二の舞にならないように、人類とピギーの接触を厳格に制限するが、とある事件が起こってしまう……。

少年だったエンダーの成長はもちろん、人類とピギーの関係、物事の善悪、宗教的な問題や思考など深いところまで描かれている。

ある意味では容赦のない展開が繰り広げられるが、だからこそ心が揺さぶられる内容になっている。

29.『ニューロマンサー』

 

舞台となるのは近未来。

サイバネティクス技術と超巨大電脳ネットワークが地球を覆い、財閥と呼ばれる巨大企業とヤクザが経済を牛耳っていた。

主人公となるのは、伝説のハッカーの弟子だったケイス。

サイバースペースにジャック・インできないよう脳神経を焼かれて、電脳都市千葉市でドラッグ浸りのチンピラ生活を送っていた。

今で言うとマトリックスや攻殻機動隊といった要素が入っており、これらの作品の祖と言ってもいいだろう。

AIに支配され、動かされる人間や時々出てくる海外目線の日本語が興味深い。難しい内容だが、そのぶん何度も読み直したくなる作品である。

30.『世界の中心で愛を叫んだけもの』

 

表題作を含めた短編集。

『世界の中心で愛を叫んだけもの』では、大量殺人を犯した凶悪犯罪者が人間への愛を叫びながら死刑となる、という場面から物語が始まる。

短編集なので、一つの物語はそう長くはない。しかし、短くともいろいろな要素が凝縮されており、何度も読み返さないとわからない部分も出てくるだろう。

短い中にも、人の狂気と愛という深いテーマがしっかりと描かれている。

残りの短編は比較的とっつきやすく、理解もしやすい。「世にも奇妙な物語」に通ずる雰囲気を持っていて好き。

31.『愛はさだめ、さだめは死』

 

表題作を含む作品集。

『愛はさだめ、さだめは死』ではヒト型の種族は登場しない。

巨大な蜘蛛に似た生命体が主人公で、名前はモッガディートという。

同種の雌と恋に落ちるまでが描かれているのだが、人以外のものが恋を語るという新鮮さはもちろん、愛の営みについても興味深く読み進めることができる。

他の短編も読みやすいが、ハッピーエンドとなるものは少ない。

そのぶん読んだ後に残りやすい部分もあるし、月日を経てまた読み返したくなってくる部分もある。非常に「癖になる作品」なのだ。

32.『順列都市』

 

2045年。

今の時代から考えるともうすぐの世界ですが、作品の中ではこの頃には人間の脳をスキャンしてコンピュータ上の仮想空間で走らせることができるようになっている。

世界各地で大富豪がこの技術を利用し、コンピュータ上で不死の存在となっているのだ。

さて物語は、ポール・ダラムという人物が、コンピュータが破壊されてしまっても宇宙が終わっても不死でいられる計画を富豪たちに提案する、というところから展開していく。

「何をもって自分とするのか」「自分とは何なのか」という部分をとても考えさせられる作品である。

本書を読み、物に囲まれている当たり前の生活に疑問を抱き始める人も多い。

33.『華氏451度』

 

舞台となるのは、本の所持が禁止されている世界

情報というのはテレビやラジオなどの感覚的なものばかり。本を所有しているとわかった場合には、ファイアマンと呼ばれる機関が出動し、本は焼却され、所有者は逮捕されることになっていた。

表面上は穏やかなものの、思考力と記憶力を失った人々は文字通り、愚民となり果てる。

ファイアマンのひとりとして働いていたガイ・モンターグが、クラリスという女性と出会ったことによって疑問を感じ始めるという物語である。

かなり古い作品ではあるものの、今の時代に合致するところが多く、他人事とは思えない内容だ。現代への皮肉とも言える作品だろう。

34.『すばらしい新世界』

 

舞台となるのは西暦2540年の世界。

いくつもの階級があり、生まれる前から人の階級が決まっていた。

人は工場で生産され、その階級に応じた教育を受ける。ソーマという薬があり、これによって不満やストレスなどを感じることなく生きていくことができる。結婚という制度に縛られることもない。

その社会に、蛮人保存地区から連れてこられたジョンが疑問を抱くという話なのだが、「人の幸せとは何なのか」についてとても考えさせられる作品である。

ある意味では理想郷とも言える社会に孕まれた狂気は、読んでいてゾクゾクしてしまう。

35.『太陽の黄金(きん)の林檎』

 

短編集。

基本的にすべての短編において、独特な詩的な表現がふんだんに使われているのが大きな特徴。

慣れていない方にとっては入り込むまでに時間がかかるかもしれないが、読み進めていくうちにその詩的な表現のおかげで作品の世界がよりリアルに想像できることに気付くだろう。

内容にはもちろん、使われている言葉やそのリズムにハマってしまう方が多い。

SFではあるものの、ファンタジーの色が濃く、ちょっとした毒の孕んでいる雰囲気が心地よい。

ただ幻想的な文章を読むだけではなく、そこで効かされている毒がいい刺激になっているのだ。

36.『2001年宇宙の旅』

 

遠い昔、ヒトザルが他の獣と同じような生活を送っていた頃、謎の物体モノリスが出現した。

1匹のヒトザルがモノリスの影響を受け、動物の骨を道具や武器として使うようになる。

月に人類が住むようになった時代、モノリスは強力な信号を発し……という形で物語が展開していく。

実は『2001年宇宙の旅』は映画化されている。

映画がよくわからなかったという方も多いが、映画がわからなかった方でもこちらを読むことによって腑に落ちる部分も多くなるはずである。というか、絶対原作を読んだ方がいい。

文章でも宇宙の壮大さはしっかりと描かれており、宇宙旅行の気分を存分に味わえるのだ。

37.『火星の人』

 

アレス3という火星探査計画中に事故が起こり、火星に取り残されてしまう男性の話。

火星に取り残されてしまったのは、マーク・ワトニーという人物。

基本的にマーク・ワトニーが書いた日記の形式で物語は進んでいく。

想像もつかないような極限の状態でありながら、ジョークがちりばめられており、彼の人間性の豊かさがよくわかる。

マーク・ワトニー自身はもちろん、彼を救出するためにNASAも頑張っている。

奇跡を信じるというよりは、ひたすら現実的に科学的に生き延びるために努力する話であり、ぐっと引き込まれるシーンが多くある。

さて、その結末は……。

38.『インターステラー』

 

同じタイトルの映画のノベライズ。

舞台となっているのは近未来で、地球は地球規模の植物の枯死や異常気象によって人類滅亡の危機に立たされていた。

元宇宙飛行士であるクーパーは、とあるメッセージに気付き、子どもを残して宇宙へと旅立つ。

かなり壮大なスケールの物語なのだが、ワームホールなど宇宙に興味を抱いている方にとってはたまらないポイントがしっかりと押さえられている。

心理描写がかなり細かく丁寧におこなわれているので、登場人物に自然と感情移入してしまうだろう。だからこそ、読んでいて苦しくもなるし、救われる部分もあるのだ。

39.『盗まれた街』

 

1953年8月13日、語り手の「私」である医者のマイルズ・ボイズ・ベンネルは患者を送り出し、カルテを書いていた。

そこにハイ・スクール時代にいい仲であったベッキィ・ドリスコルがやってくる。ベッキィはいとこのウィルマのことを相談しに来たのだが、その内容が奇妙なものだった。

ウィルマは、自身の伯父さんであるアイラ伯父さんが、アイラ伯父さんに似た別人のようだと訴えるのだ。

そして同じような相談をしてくる患者が増えていき……という形で話が進んでいくのだが、少しずつ日常が侵食されていく感じがとてつもなく怖い。めちゃくちゃ怖い。

SFよりもホラーの要素が強いかもしれない、というくらい怖い。人間もどきが植物の莢のようなものから生み出される描写はかなりのインパクト。トラウマものである。

40.『あなたの人生の物語』

 

表題作を含む短編集である。

表題作『あなたの人生の物語』は、簡単に言うと、地球に現れたエイリアンとのコンタクトの話。

言語学者のルイーズ・バンクス博士はエイリアンとのコミュニケーションを取るために、軍から協力を求められることになる。

単純な言語学者とエイリアンの物語ではなくて、そこにはルイーズの娘のことも絡んできて物語は深まっていく。

過去、現在、未来のすべてが組み込まれている言語などなかなか難しい部分もあるのだが、構成が秀逸であり、読み進めていくことによってどんどんクリアになっていく気持ち良さがある。

読み終わった後も、しばらく物語の余韻に浸っていたい。そう思わせてくれる作品である。

41.『ようこそ地球さん』

 

ショートショートの神様・星新一氏の作品集である。

星新一氏は数多くの作品集を出しているが、その中でも特にSF色が強めなのがこの『ようこそ地球さん』だ。

宇宙時代には人工冬眠の流行で地上は静まり返っていた、自殺が信仰にまで昇華していた、宇宙植民地では大暴動が起こっていた……など、これから待ち受けるであろう人類の未来をブラックユーモアを交えて描いている。

微笑ましい話もあれば、ぞっとするような怖い話もあって、いろいろなタイプの話を楽しむことができるのだ。

「ようこそ地球さん」というタイトルからするとアットホームなものをイメージするかもしれないがが、そのイメージをいい意味で裏切ってくれるだろう。

しかもショートショート42編というボリュームである。贅沢の極みだ。

42.『My Humanity』

 

『地には豊穣』『allo, toi, toi』『Hollow Vision』『父たちの時間』という4つの短編が収録。

技術開発に関わる研究者の葛藤や好きという感情について、宇宙海賊による液体コンピュータの強奪や人の手に負えなくなってしまったテクノロジーなどについて描かれている。

自問自答させられるテーマもあり、読んだ後に思考が止まらなくなってしまうという方も多いだろう。

どれもこれからの未来に十分にあり得る話であり、そういった意味でもSFというものを身近に感じられる作品である。

43.『ハーモニー』

 

2019年、《大災禍(ザ・メイルストロム)》によってそれまでの政府は崩壊し、新たな統治機構「生府」の下で高度な医療経済社会が築かれることになった。

社会のために健康・幸福であれという世界になったのだが、女子高生の霧慧トァンは健康・幸福社会を憎悪する御冷ミァハに共感し、友人の零下堂キアンと共に自殺を図る。

しかし生府に気付かれ、失敗。ミァハのみが死んでしまう。

13年後、WHO螺旋監察事務局の上級監察官として活動していたトァンはキアンと再会するが、同時刻に世界中で大量の自殺者が出る事件に遭遇。

予測不可能の怒涛の展開は読み応え抜群、将来的にあり得る社会という部分が妙にリアリティを感じさせるのだ。

44.『南極点のピアピア動画』

 

タイトルから何となく察している方もいると思うが、ニコニコ動画と初音ミクをモデルにした動画共有サイトのピアピア動画と、ボーカロイド・小隅レイを中心としたSF短編集である。

ピアピア動画技術部が宇宙飛行や軌道エレベーターなどを実現してしまう作品。

この世界ではピアピア動画がインフラレベルで浸透しており、ある意味では作者の期待が込められている部分もあるのだろう。

表紙の印象で手に取るのを躊躇してしまう方も多いようだが、中身はもろにハードなSFなので一読しておかないと損である。

ニコニコ動画やボーカロイドを知っているとより楽しめるだろう。

45.『アリスマ王の愛した魔物』

 

表題作を含む短編集。

全部で5篇あるのだが、それぞれに違った味わいがあり、飽きのこないものとなっている。

タイトルにもなっている『アリスマ王の愛した魔物』も好評だが、どちらかというと他の作品のほうにハマっている方も多いように思える。

AIと人間との関係、AIが起こす積への責任など、将来的に起こり得るであろうテーマを取り上げているので世界観に入りやすい。

ハードなSFという感じではないので、SF初心者の方でも安心して読めるのも嬉しいポイントだ。

丁寧に作り込まれているので、SFというジャンルを抜きにしても完成度の高い作品ばかり。私ももう何度も読み返している。

46.『スタートボタンを押してください』

 

ゲームSFのアンソロジー。12篇の作品が収められている。

テーマとなっているのは、タイトルからもわかるように《ゲーム》だ。

もちろん、ゲームをプレイしない方でも楽しめる作品になっている。

殺されるたびに人格が加害者に移ってしまうというサスペンスSFや、ネットゲームの仲間が死んだところから始まるミステリー、自我を持ってしまったゲーム用のプログラムなど、一口にゲームといってもさまざまな角度からアプローチされている。

中には有名なSF小説のパロディーもあって、それぞれの作風の違いなどいろいろな意味で楽しめるアンソロジーだ。

47.『最後にして最初のアイドル』

 

表題作の他にも2作品が収められている作品集。

タイトルになっている「最後にして最初のアイドル」は、とにかくインパクトのある短編である。

アイドルとSFというだけでも異色の組み合わせなのだが、そこからスプラッタや神話といった要素も含まれていってとんでもないことに。

決して長くはない物語のに、よくぞここまで……というくらいに詰め込まれている。

読み進めてもどこに着地するのかわからないドキドキ感も大きな魅力。とにかくストーリーが落ち着くということがないのだ。

第48回星雲賞日本短編部門を受賞、話題になったのも頷ける作品である。

48.『果しなき流れの果に』

 

中生代の地層から砂時計が発見される。

それもただの砂時計ではなく、無限に砂が流れ続けるというものだった。

理論物理学研究所の助手である野々村浩三は、教授らと一緒に砂時計の見つかった古墳へと向かう。

しかし古墳から帰ると、関係者の変死や行方不明などで事情を知る者がいなくなってしまった。

これが時空を超えた物語の始まりになるのだが、とにかく物語が壮大。主人公がこのために旅をしてきたのか……ということがわかると、本当に胸がいっぱいになってしまう。

主人公と同じように、知りたい、わかりたいと思いながら読み進めていく楽しさもある。不朽の名作と言われるのも納得なのである。

49.『時砂の王』

 

遠い未来からやってきたオーヴィルを迎え入れる卑弥呼、という、SFと邪馬台国の異色の組み合わせが楽しめる作品。

オーヴィルは使いの王として時代に干渉し、地球にとってなにが有効なのかを模索していく。

物語の途中では絶望感を味わうことになるのだが、卑弥呼の選択によって希望が生まれたり生まれなかったり。ハラハラドキドキである。

SFと邪馬台国という組み合わせだけでも興味を引かれるし、実際に読み進めていくと本当に止まらなくなってしまう。

終盤は「本当に終わるの?」と思ってしまうほどの、最後の最後まで楽しませてくれる怒涛の展開が待っている。

途方のないスケールの話であるが、だからこそ心に残る読みごたえになるのだ。

50.『旅のラゴス』

 

高度な文明を持っていた黄色い星を脱出した1000人の移住者が「この地」にたどり着く。

ただ、人々は機械を直すことができずに、文明はわずか数年で原始に逆戻りしてしまう。

その代わり、人々は超自然的能力を獲得した。それから2200年余り経った時代、主人公であるラゴスは一生をかけて「この地」を旅するわけだが。

ラゴスの24歳から68歳までを描いている作品で、「人生は旅である」ということを強く痛感させられる物語である。

旅先でラゴスは王様になってみたり、奴隷になってみたりとそれぞれの場所で爪痕を残していく。そんなラゴスを見ていると、まるで一緒に旅をしているような感覚になってしまうのだ。

それゆえ、読んだ者の人生を変えてしまうほどに、影響力のある作品である。

あとがき

以上が『SF小説おすすめ50選-死ぬまでに読んでおきたい名作・傑作集』である。

結果的に海外作品が多くなったが、海外作品に苦手意識を持っている方も、この機会にぜひ手にとってみてほしい。

最初にも述べたが、SF小説に興味があるなら読んで後悔はさせない。

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