初めて『11 eleven』を読んだ時の衝撃は今も忘れない(脳みそがギュン!となった)。
しかもその一発目が『五色の舟』という圧倒的傑作だったために、私はすぐに津原ワールドへと取り込まれてしまった。
もし「怪奇」「奇妙」「幻想」などのキーワードがお好きであれば、ぜひ津原泰水さんの作品を読むことをおすすめしたい。きっとハマる。
というわけで、まだ津原さんの作品を読んだことがない、という方はまずはこの中から選んでくれい!
1.『11 eleven』
津原さんの作品で「最初の一冊にはどれがおすすめ?」と聞かれたらコレである。
まさに津原ワールド全開の短編集であり、これを読めば一発で奇妙な世界へと連れて行ってくれる。
ジャンルでいうと、SFとホラーと幻想と純文学を混ぜ込んだような感じ。ジャンル分け不能ということである。
どれも面白いのは確かなのだが、今作の中では「五色の舟」という短編がずば抜けて傑作である。他の短編が霞んでしまうほどに。
未来を予言するといわれる伝説の生き物〈くだん〉を軸にしたお話であり、その濃厚さと読後の満足感は別格。読んでよかった、というよりは「すごいものを読んでしまった」という恐れに近い。
最初はあまりに独特な世界観についていくのがやっとかもしれないが、それはすぐに慣れる。安心して読んでいただきたい。
2.『綺譚集』
これもまたジャンルのよく分からない短編集である(良い意味で)。
あまりに特殊な世界観のため、正直言って合わない人には全く合わないはず。
しかし、『11 eleven』を読んで「面白い」と思った方、もともと怪奇小説や幻想小説がお好きな方、は読んでおいてまず間違いない。
先ほどの「五色の舟」のようにずば抜けたものはないが、どれも安定して面白いバランスのとれた作品群である。
津原さんの作品を読む上でも優先的に読んでおきたい一作なのだ。
3.『蘆屋家の崩壊』
語り手〈猿渡〉と怪奇小説家の〈伯爵〉が過去に出会った怪奇体験を語っていく、というミステリでもホラーでもない不思議な話が綴られる〈幽明志怪シリーズ〉の一作目。
「幻想怪奇短編集」という言葉がぴったりな作品である。
先ほどご紹介した二つの短編集よりも読みやすいので、読み始めればすぐにスッと物語へ引き込まれることだろう。
非常に気味の悪いお話ばかりなのだが、それが癖になる。「猫背の女」とか本気でゾクッとした。
このシリーズは第二作『ピカルディの薔薇』、第三作『猫ノ眼時計』へと続く。
一作目の『蘆屋家の崩壊』を気に入っていただけたなら、ぜひ全部読んでしまおう。
4.『ルピナス探偵団の当惑』
これまで「怪奇」や「幻想」という言葉がぴったりな作品ばかりだったが、この『ルピナス探偵団の当惑』はとても真っ当な(津原さんにしてみれば)ミステリ短編集である。
登場するキャラクターも魅力的であり、ユーモアのある展開で心をがっちり掴まれる。初めて読んだ時は「本当に津原さんの作品なの?」と思ったほど。
しかし、読み進めていればわかる。「ああ、これはやっぱり津原作品なのだ」と。
内容はいたって本格なミステリ。しかもフーダニット(犯人は誰?)よりもホワイダニット(なぜそんな事をしたのか)をメインとしているところが余計に面白い。
少女小説とミステリのマッチングも良く、青春ミステリー小説としても楽しめる作品なのだ。
米澤穂信さんの『古典部シリーズ』のような、〈学園&日常の謎〉がお好きであればぜひ読んでみよう。
おわりに
他にも『エスカルゴ兄弟』や『クロニクル・アラウンド・ザ・クロック』といった面白い作品があるのだが、今回は特に〈津原泰水さんらしい〉作品を選ばせていただいた。
もしまだ津原さんの作品を読んだことがないのであれば、ぜひこの中から選ぶことをおすすめします。
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