辻村深月さんの最初に読むべきおすすめ作品と読む順番を語っていくよ

辻村深月(つじむらみづき)さんのオススメ作品は「全部」と言っても良いくらいだが、その中でもとりあえずこの作品だけは優先的に読むべき、という作品が存在する。

それが、これからご紹介させていただく作品たちである。

そして辻村作品には「読む順番」というものが存在する。読む順番によって、辻村ワールドの楽しさが大きく変わってくるのだ。

シルーズものでもないのになぜ順番に読む必要があるのか?と思われるかもしれないが、その理由はご自身の目で確かめていただきたい。読んでいただければすぐにわかるはずだ。

もう一度言おう。

辻村深月さんの作品を読むなら、まずこれらの作品を順番に読んでおけば間違いない。

逆に、順番に読まないと確実に後悔する。

ぜひ参考にしてほしい。

1.『スロウハイツの神様』

 

私はこの作品で辻村深月さんを大好きになった。一生、辻村さんの作品を読んでいこうと決めた。

人気脚本家・赤羽環(あかばね たまき)がオーナーを務めるアパート「スロウハイツ」を舞台に、そこに住む漫画家や映画監督を目指すクリエイターの卵たちが織り成す青春物語である。

前半に伏線や謎が大量に仕込まれ、後半に入ってからテンポよく回収されていき、最後の最後で怒涛の展開を迎える、という辻村作品の良さがモロに味わえる。

「こんなに登場人物を好きになることってある?」ってビックリするくらいスロウハイツのみんなを好きになってしまうのだ。

登場人物も魅力的すぎるし、物語も素敵すぎる。最後の展開なにあれ。泣いてまうわ。

上巻ではあくまで「下巻のための準備」のようなものなので、上巻だけ読んで判断するのではなく必ず上下巻セットで一気読みしよう。

他にも言いたいことはたくさんあるが、一言にまとめるなら「何も言わずに読んでくれ」だ。

2.『かがみの孤城』

 

『スロウハイツの神様』が最高傑作だ、と確信していたが、この作品の登場のおかげで確信を持てなくなってしまった。それほどに傑作だったのだ。

辻村深月さんの作品を一度も読んだことがない方にはいつも『スロウハイツの神様』をオススメしていたのだが、これからは『かがみの孤城』も一緒にオススメすることにする。

いじめによって学校にいけなくなってしまった中学生・安西こころが部屋にいると、突然鏡が光り出した。

手を伸ばすと鏡の中に引き込まれてしまい、そこには狼の面をつけた少女、お城、そしてこころと同じく「鏡の中に吸い込まれてしまった」という六人の少年少女がいた。

狼の面をつけた少女は言う。「城のどこかに隠されている、願いが叶えられる「鍵」を探せ」、と。

辻村深月さんの持ち味である、あらゆる箇所に散りばめられた謎と伏線を終盤で一気に明らかにしていく、という展開が存分に味わえる。これが本当に快感なのだ。

なんという優しい物語だろう。完璧だった。辻村深月さんの良さが全て詰まっている、と言って良い。

あの真相をぜひ目にしよう。これが、辻村深月さんなのだ。

辻村深月さんの『かがみの孤城』が『スロウハイツの神様』並みの傑作だった

 

というわけで、辻村深月さんの作品をまだ読んだことがないなら、『スロウハイツの神様』か『かがみの孤城』をオススメする。

万が一どちらも楽しめなかったのなら、もう完全にお手上げである。

3.『凍りのくじら』

 

ドラえもんへの愛が込められた、SF(少し・不思議)な物語。

青春小説か、恋愛小説か、家族小説か、ミステリー小説か、サスペンス小説か、ファンタジー小説か。いや、どのジャンルでもない。これは「辻村深月」というジャンルなのである。

この『凍りのくじら』を最初に読んだ方が良いという意見もあるようだが、やはり『スロウハイツの神様』か『かがみの孤城』を読んで、辻村深月さんを大好きになってから読んでいただきたい。

それでいて、数ある辻村さんの作品の中でも優先的に読むべき作品なのだ。

というわけで、順番的には『スロウハイツの神様』と『かがみの孤城』を読み終えてから手に取るのがベストである。

その頃にはすでに辻村深月さんを大好きになっているはずなので、嫌でもどハマりすること間違いなしだろう。

序盤はスローなテンポで物語は進むが、どうか退屈しないでいただきたい。相変わらず終わりに向けての収束感は最高である。鳥肌を覚悟しよう。

4.『冷たい校舎の時は止まる』

 

辻村深月さんのデビュー作である。

私立青南学院高校の生徒達8人は、それぞれいつものように学校へと向かう。しかし学校には他に誰の姿もなく、奇妙に思った彼らは学校を出ようとする。

しかし、玄関のドアが開かない。彼らは学校に閉じ込められてしまったのだ。

なぜ学校から出れないのか?と皆で話し合ううちに、学園祭の最終日に飛び降り自殺したとある生徒の話になった。

だが。

八人とも事件があったことは覚えているのだが、自殺した生徒の顔と名前が全く思い出せないのだ。

なぜ思い出せないのか、と話しているうちに、この八人の中に自殺した生徒がいて、その生徒が自分たちを閉じ込めているのではないか、という結論にたどり着く。

あの日、自殺したのは誰なのか。

しつこいくらいに登場人物ひとりひとりにスポットライトを当てるため「テンポが悪い」「長すぎる」などの声もあるが、私的には「ナニを言っているのだ」という話である。

それがこの作品の魅力なのだ。私なんて「もっと読んでいたい」と思ったくらいだ。

というわけで、結末までテンポよくサクッと読める作品を求める方には向かないかもしれないが、登場人物をの内側を深く掘り下げ、じっくりと物語と世界観に浸りこむことが好きな方には非常にオススメである。

※確かに展開はゆっくりだが、決して読みにくいという事ではない。むしろ漫画を読むようにスイスイ読めるのでご安心を。

この『冷たい校舎の時は止まる』を読んで気に入っていただけたなら、続けて『ロードムービー』という作品を読むことをオススメする。

間違っても『ロードムービー』を先に読まないように。

5.『子どもたちは夜と遊ぶ』

 

木村浅葱(きむらあさぎ)と狐塚孝太(こづかこうた)という二人の学生は、ある論文コンクールの最優秀賞を狙っていた。

誰もが二人のどちらかが受賞するだろうと思っていた中、最優秀賞に選ばれたのは「i(アイ)」と名乗る謎の人物だった。

そんな事をきっかけに始まるiとθの「殺人ゲーム」を描いた、ダークな世界観でのサスペンス溢れる物語である。「ブラック辻村」とでも言おうか。

ミステリー要素が強く、前半を読めば「i」の正体が気になって仕方がなくなる事だろう。上下巻一気読みは避けられないのだ。そして相変わらずの「怒涛の下巻」である。結末を知って「ナンテコッタイ!」と心の中で叫んでしまった。

いつもの事だが、辻村深月さんの作品は登場人物の心情をしつこいくらいに描いている。そして、各人物の心のやりとりが絶妙だ。これだけでグイグイ読まされてしまうわけだ。

6.『ぼくのメジャースプーン』

 

この作品を読む前に、上に紹介した『子どもたちは夜と遊ぶ』を読んでおく事を推奨する。

これは、ある特殊能力を持った小学四年生の「ぼく」を主人公とした物語。

その能力とは「条件ゲーム提示能力」と呼ばれており、『相手に〈A〉をしなければならない。そうしなければ〈B〉になってしまう』と命令すると、それを受けた人は〈B〉を恐れ、〈A〉の行動を強制させる事ができるというものだ。

単純なように見えて能力の「条件」がとても細かく練られていおり、それが物語をさらに面白くするポイントとなる。

さて今作は、この能力を持った「ぼく」が、学校のうさぎを惨殺されショックを受けた「ふみちゃん」のために、その犯人に復讐するという物語である。

復讐というとちょっと怖い話のように思えるが、これは愛の物語なのだ。

あのエピローグを、涙なしでは見られまい。

7.『名前探しの放課後』

 

この作品を読む前に、上でオススメさせていただいた『凍りのくじら』『子どもたちは夜と遊ぶ』『ぼくのメジャースプーン』を読んでおく事を強くオススメする。というか絶対にそうした方が良い。なぜかは、読めばわかる。

三ヶ月前にタイムスリップした高校生が、三ヶ月後に起こる同級生の自殺を止めようと奮闘する物語である。

面白いのは「誰かが自殺するという記憶があるのに、’‘誰が’‘自殺するかがわからない」という設定だ。果たして一体「誰が」自殺をするのか。

ミステリー色が強いが、これは間違いなく「青春小説」としての名作である。

辻村さんの作品は序盤ゆっくりの進むものが多いが、この作品は序盤からグイッと物語に引き込ませてくれる展開を迎える。そこからもう目が離せないので、読む前にトイレを済ませておこう。

おわりに

以上が辻村深月さんの「まず読むべき作品」と「読む順番」である。

今回ご紹介した作品を読んでいただいたあとは、ぜひ『光の待つ場所』という作品も読んでみよう。これまで辻村作品をちゃんと読んできた方には、たまらない短編集となっているのだ。

しつこいようで申し訳ないが、読む順番によって辻村ワールドの楽しみ方が大きく変わってくるので、ぜひ参考にしていただきたい。

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