歌野晶午さんのおすすめミステリー小説6選+1作品

『葉桜の季節に君を想うということ』でミステリー界に大きな衝撃を与えた歌野晶午(うたのしょうご)さんのおすすめ小説をご紹介したい。

『葉桜の季節に君を想うということ』を読んで歌野さんに興味を持ったなら、次の作品はぜひこの中から選ぼう。

逆に「『葉桜〜』は合わなかったなあ」という方もぜひ他の作品を読んでいただきたい。はっきり言って『葉桜〜』は特別クセの強い作品なので、好みが分かれるのも仕方がないのだ。

これで合わなかったからといって他の作品を読まないなんて非常にもったいない!というくらい面白い作品が揃っている。

ぜひ参考にしていただきたい。

1.『密室殺人ゲーム王手飛車取り』

 

チャットを通じて集まった5人の参加者たち。そのうちの1人が殺人を犯し、他のメンバーが犯行に使われたトリックを当てるという殺人ゲームを描く。

彼らは「問題を出すため」という理由のために、非常に軽いノリで殺人を犯していく。殺人に対しての抵抗が全くないのだ。「面白いトリックを思いついた!よし、このトリックを使って人を殺して、問題に出そう!」みたいな。とっても無邪気である。

基本的にミステリー小説といえばフーダニット(犯人は誰?)をメインとしたものが多い中、今作では犯人を当てる必要がなく、あくまでハウダニット(どうやって殺したか)のみを推理することに特化しているのが面白いところ。

もちろんホワイダニット(なぜそんなことをしたのか)も考える必要がない。「問題を出すため」なのだから。

序盤からすでにテンポ良くストーリーは進み、後半からさらにスピードが上がってくる。ほんとに読む手が止まらない展開の連続なのだ。そしてあのオチである。ぜひ楽しんでいただきたい。

読み終わったらすぐに続編の『密室殺人ゲーム2.0 (講談社文庫)』に取り掛かろう。

2.『Rommy』

 

天才シンガーROMMYが密室で殺害された。しかも目を離した隙にROMMYの死体がバラバラに解体され、胴体が持ち去られるという事態に。

メインとなる謎は、フーダニットでもハウダニットでもなくホワイダニット。つまり「なぜ胴体が持ち去られたのか」ということ。

ミステリー小説において体の一部が持ち去られるというのはよくある話だが、そんな面倒なことをするのにはそれ相応の理由が必要になってくる。なんとなく持ち去りました、ではダメなのだ。

その点この作品は素晴らしい。真相が明らかになった時、「ああ、なんという、、」とため息が出るような気分になってしまう。

ミステリー小説として、というか一つの小説として強くオススメしたい。

3.『長い家の殺人』

 

歌野晶午さんのデビュー作。〈信濃譲二シリーズ〉の一作目。

正直言うと今作単体では「めちゃくちゃ面白い」とは言い難く、この作品をオススメしている人をあまり見かけない。

しかし〈信濃譲二シリーズ〉を読む上では絶対外せない作品だし、島田荘司さんが絶賛したというのだから読まないわけにはいかないのだ。

学生バンド〈メイプル・リーフ〉のメンバーたちが合宿で訪れたロッジで殺人は起こる。そこに元メンバーの信濃譲二が現れて、事件を解決へと導いていくというわけだ。

トリックがわかりやすいという意見や、信濃譲二のキャラクターになかなかクセがあるが、非常に「王道の推理小説」といった感じなので本格好きならぜひ読んでおきたいところ。

続く第二弾『白い家の殺人』最終作『動く家の殺人』の面白いので一気に読んでしまおう。というか最終作の『動く家の殺人』を読むために一作目から読んでほしい。

4.『放浪探偵と七つの殺人』

 

上でご紹介した〈信濃譲二シリーズ〉の探偵役・信濃譲二の活躍を描いた短編集。

短編ながら一つ一つが濃厚であり、叙述モノや倒叙モノなどいろんなタイプのミステリが楽しめるのが嬉しいところ。

全体的にクオリティは高いが、中でも『有罪としての不在』は傑作の域。これだけでも読んでいただきたい。また『ドア⇔ドア』も非常に面白い短編。

ミステリー小説でおなじみの〈読者への挑戦〉も含まれている。が、この作品の〈読者への挑戦〉は一筋縄にはいかない。ぜひ楽しんでくれたまえ!

5.『さらわれたい女』

 

歌野さんならではの誘拐モノ。国内ミステリにおける誘拐モノの中でもかなり面白いほう。

夫の愛を確かめたいという理由で「わたしを誘拐してくれ」と言ってきた女性。便利屋の俺は見事に誘拐を成功させたものの、身を隠していたはずの女性が殺されてしまった。いったいなぜ。

非常によく練られた構成でスリリング。二転三転する展開を楽しみながらサクサク読み進めることができる。この読みやすさはとてもありがたい。

伝言ダイヤルや転送サービスなど、時代を感じさせるトリックが逆に面白かったりするのだ。

5.『葉桜の季節に君を想うということ』

 

歌野晶午さんの代表作。

人によって賛否が分かれるようであるが間違いなく名作である。とにかく「やられた!」という感覚がお好きであれば、一度は読むことをオススメする。

良くも悪くも忘れられない読書体験になる事だろう。

ルール違反だ!なんて声が上がるのもわからなくはない。しかし、あの衝撃的トリックとミスリードの巧妙さは滅多に味わえるものではないのだ。再読してみると余計にミスリードの面白さがわかる。

どんでん返し小説として有名なので身構えてしまうかもしれないが、安心してほしい。構えたところで無駄である。そもそも「騙されるための小説」であるので、びっくりしない方がおかしいのだ。

おまけ:『ハッピーエンドにさよならを』

 

ミステリー小説として読むものではないが、ぜひオススメさせていただきたいのがこの作品。

タイトルから想像がつくように、ハッピーエンドにさよならしてしまったお話が収められた短編集である。

どうあがいてもバッドエンドになる事はわかっているので、いっそ開き直って読んでしまおう。

心苦しいしテンションは下がる一方だが、なぜか読む手が止まらないのだ。不思議だね。しかも歌野さんらしい捻りも聞いているから楽しい楽しい。

ブラックなお話が好きな方はぜひ。

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