クリスティーやカー、クイーンと並び、本格ミステリの黄金時代を代表する作家の一人、ヴァン・ダイン。
英国ミステリーが圧倒的に評されている最中に登場し、一躍アメリカの本格派として君臨した素晴らしきお方なのだ。
つまり「ミステリー小説がお好きなら絶対におきたい作家さん」ということである。
今回は、そんなヴァン・ダインの優先的に読むべきおすすめ作品を四つご紹介させていただきたい。
『僧正殺人事件』
見立て殺人の元祖である。この作品を読まずして、見立て殺人は語れない。
胸に矢が刺さり、弓術選手のジョーゼフ・コクレーン・ロビンが死体となって発見される。その状況は、マザー・グース「コック・ロビンの死と葬い」にとてもよく似ていた。
しかも郵便受けには、「僧正」と名乗る人物からの書付けが入れられており……。
今となっては見立て殺人を扱うミステリー小説も多いが、これが1929年に発表された作品だというから驚きである。すでに完成されているのだ。
これまで多くの見立て殺人ものを読んできたが、やはり何度読んでも『僧正殺人事件』は面白い。無駄な要素は全くなく、シンプルにまとまった正統派推理小説といえよう。
探偵役・ヴァイスのキャラクター性も申し分なく、終盤、畳み掛けるように襲ってくる真実にぜひ驚いていただきたい。
『グリーン家殺人事件』
『僧正殺人事件』と並ぶヴァン・ダインの代表作。
ニューヨークに佇むグリーン家を舞台とした「館モノ」の古典である。
数多くの作品に影響を与え、小栗虫太郎『黒死館殺人事件』やエラリー・クイーン『Yの悲劇』などはこのグリーン家を意識して書かれたことでも有名。
推理小説を読みなれた現代の読者にとっては、犯人やトリックにはさほど驚かないかもしれない。しかし、本当に面白い推理小説というのは、たとえ真相がわかっていたとしても面白いものなのだ。
私はもう何度も読んでいるが、その度に「面白いなあ」とつくづく思う。
グリーン家に住む人々が容赦なく殺されていく過程はサスペンスに溢れ、それだけでも一気読みをさせられてしまう魅力がある。
そのため最終的に容疑者はかなり絞られるが、それでも残された多くの謎を全て解決していく終盤はやはり圧巻なのだ。読後は気持ち良さすら感じる。
というわけで、まだヴァン・ダインの作品をことがないなら、『僧正殺人事件』と『僧正殺人事件』の二作品を真っ先に読んでおこう。
これを読まずして推理小説は語れない、と言っても過言ではないほどの名作であるので、読んでおいて損ということはまずありえない。
続いて、この二作品を面白いと思っていただけたなら、ぜひ続けて読んでほしい作品を二つご紹介したい。
『ベンスン殺人事件』
実は『僧正殺人事件』と『グリーン家殺人事件』はどちらも名探偵ファイロ・ヴァンスが活躍するシリーズものであり、『ベンスン殺人事件』はその一作目。ヴァン・ダインのデビュー作でもある。
僧正やグリーン家と比べると知名度は落ちるものの、細かに練られたプロットは今読んでも十分に楽しめるものとなっている。
それでいてファイロ・ヴァンス初の事件というのだから、読まずにいられる方が困難というものだ。
『カナリヤ殺人事件』
ファイロ・ヴァンスシリーズの二作目。
確かにメインとなるトリックは僧正やグリーン家に劣る印象を受けるが、個人的にはかなり好きな作品なのだ。
何が好きかって、容疑者を集めて行われる「ポーカーでの心理戦」である。犯人がわからないまま皆でポーカーを行い、このポーカーによって犯人を指摘するのだ。
なんと見事な、そして面白いシーンだろうか。これだけで十分楽しめてしまう。
また、登場人物の会話劇が見ていて楽しい、というのもこのシリーズの魅力の一つだろう。
おわり
というわけで、他にもファイロ・ヴァンスを主人公とした作品は多くあるが、まずはこの四作品を優先的に読んでいただきたい。
特に、『僧正殺人事件』と『グリーン家殺人事件』はミステリ小説がお好きなら「必読」レベルである(どちらが先でも大丈夫)。
参考にしていただければ嬉しい。
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